e全公衆浴場にAED設置
- 2018.01.29
- 生活/生活情報
公明新聞:2018年1月29日(月)付
23区初 夜でも救急対応可能に
組合、社会貢献の一環
東京・品川区
東京都品川区では、区内全24カ所(2017年末現在)の公衆浴場に、緊急時の救命に役立つAED(自動体外式除細動器)が配置され、利用者や区民から喜ばれている。自治体区域内の全公衆浴場へのAED配置は東京23区では初めて。人口40万人規模のまちとしても全国で数少ない事例だ。
品川区は区議会公明党(若林広毅幹事長)の働き掛けもあり、早くから区内の公共施設へのAED設置を進めてきた。しかし、ほとんどの公共施設は深夜まで開いていない。区の関係者によれば、深夜まで多くの人が訪れる施設や店などでAEDを設置する場所は少なく、夜の時間帯にAEDが活用されにくいことが課題の一つだったという。
一方、品川区内の公衆浴場でつくる品川区公衆浴場商業協同組合(開發久治理事長)は、地域貢献の一環として、AED設置を考えていた。
公明議員が提案
開發理事長から話を聞いた区議会公明党の鶴伸一郎議員は、昨年2月の定例会一般質問で、かねてから訴えてきた24時間営業のコンビニエンスストアやガソリンスタンドなどに加え、「深夜帯まで営業している公衆浴場へも、AED設置費用の助成を検討してはどうか」と提案した。
品川区は介護予防事業の一環として、区内の公衆浴場に委託し、毎週木曜日、「しながわ出会いの湯」を実施していることもあり、公的事業の委託先である公衆浴場へのAED設置費用助成を2017年度補正予算に計上。今回の設置に結び付いた。
開發理事長は「常連のお客さまはご高齢の方も多い。安心して入浴を楽しんでほしい。同業者が減っていく中、社会貢献にも心を配り、お客さまにも満足していただき、古くからの庶民の社交場を少しでも長く残していきたい」と語る。公衆浴場を会場にAEDのデモンストレーションを兼ねた救命講習会なども開いていく考えだ。
鶴議員は「とにかく人命第一。AEDを使える場所をもっと増やしていきたい。また、銭湯という庶民の文化を末永く守っていきたい」と話す。
日本は設置数トップクラス 周知や利用可能時間など課題
音声のガイドに従って一般人でも除細動(心臓本来の拍動を取り戻すため、電気ショックなどで心室細動と呼ばれる心臓の細かい震えなどを取り除くこと)を行うことができ、心肺蘇生を促すことのできるAED――。緊急の人命救助に大きな役割を果たす画期的な機器として各地で導入が進み、日本のAED設置数は現在、世界でもトップクラスだといわれる。
AEDによる蘇生で救命率が2倍以上になり、社会復帰する人も増えているという実証研究もある一方で、病院以外の場所で心室細動などが起きた場合、AEDが使用される事例は数%にとどまっていることが課題とされている。AEDの使い方が分からないという声もあり、設置場所が増えたとはいえ、救命率に大きく関わる心停止5分以内にAED使用が可能となる目安とされる直線距離300メートルごとのAED設置には、まだ程遠い状況だ。深夜の時間帯にAEDの使用が可能な施設や店などが少ないことも、AEDの使用事例が少ない一因とされる。