e仮想通貨の流出

  • 2018.01.31
  • 情勢/解説

公明新聞:2018年1月31日(水)付



優先すべきは利用者の保護である。これをないがしろにしていたからこそ、起こったトラブルではなかったか。

金銭的価値があると見なされ、インターネット上で取り引きできる電子データの仮想通貨。これを扱う国内の取引所、コインチェックから580億円相当という巨額の仮想通貨が流出した。ネット経由で外部から不正に侵入され、盗まれたのである。

流出した仮想通貨は「NEM(ネム)」。現在、1000種類以上ある仮想通貨は、流通額首位のビットコインが最も有名だが、ネムは10番目前後の人気通貨の一つだ。コインチェックが預かっていたネムは26万人分で、そのほぼ全額が流出した。

同社の管理態勢は、あまりにもずさんであったと言わざるを得ない。

仮想通貨を入手する際、銀行口座に該当する「ウォレット」(英語で財布の意味)をつくり、それを取引所が保管する。ネット上で流通する仮想通貨は、常にハッキング(第三者の不正侵入によるデータの改変や盗難)の危険にさらされているため、取引所は通常、ウォレットをネットにつながない状態で保管する。

しかし、同社はネットにつないだままの状態で保管していた。ハッキングの防止で推奨されている技術も導入していなかった。

日本では、昨年4月に施行された改正資金決済法で、利用者保護のための対策を講じているかどうかなどを審査し、仮想通貨を扱う取引所を登録する制度を導入した。現在、審査を通過し、登録された取引所は16社ある。

驚くのは、コインチェックが仮想通貨の取扱高で首位を争うほどの最大手であるにもかかわらず、未登録であったという事実だ。

金融庁は、未登録を含む全ての取引所の安全対策の現状を確認する緊急調査に乗り出した。取引所に利用者保護を優先した対策を徹底するよう指導すべきである。

3月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、ドイツとフランスが、利用者の保護に向けて、仮想通貨を規制するためのルール案を共同提案するという。日本も、国際的なルールづくりに積極的に関与すべきだ。

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