eコラム「北斗七星」

  • 2018.02.07
  • 情勢/社会

公明新聞:2018年2月7日(水)付



今年になって幾度か本紙の広告欄で目にした曾野綾子さんの新刊『私の漂流記』(河出書房新社)を読んだら、こんなくだりがあった。「取材は体力も使うし疲れもするが、現場を熟知したいという礼儀に照らして考えても、大切なものであった。知らずに、描写も感謝も批判もできない」◆思い出して曾野さんの小説『湖水誕生』(中央公論社、1985年発行)を読み返した。ロックフィルダムでは東洋一の規模とも言われる高瀬ダム(長野県、79年完成)の困難な工事の現場が舞台だ◆小説の中で、立方メートルを「立方米」、掘削された土砂は「ずり」、暗い地中の工事に対して地上を「あかり」と呼ぶなど、現場の言葉に出会い、水力発電所の設計に数年従事した経験がある北斗子などは、うれしくなる◆あとがきで曾野さんは「約7年間、私はあらゆる機会と季節に高瀬通いを続けた。(中略)工事を知るためには、日常的な作業を繰り返している現場に、ただひたすらいる」と、取材した当時を振り返っている。現場にいたからこその筆致は、読者の心に届く。土木学会賞(著作賞、86年度)にも選ばれた◆そう、公明党も「現場に必ず足を運び、私たちの声を政治に届けてくれる"安心"をもたらす存在」(大橋信夫JA福島五連会長=1月28日付本紙)。こんな期待に応え続ける。(三)

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