e農家支える収入保険
- 2018.02.22
- 情勢/経済
公明新聞:2018年2月22日(木)付
公明が推進、19年1月スタート
収量減少や価格下落時など 基準収入の最大8割以上確保
農家の経営を安定させるため、自然災害などにより売り上げの予期せぬ減少に直面した場合に、その一部を補てんする「収入保険制度」が2019年1月からスタートする。公明党が強力に推進してきた同制度のポイントを解説するとともに、関係者の期待の声や今後の課題を紹介する。
今秋から加入受け付け
場合農林水産省は、基準収入(過去5年間の平均売り上げ)が1000万円となる農家が収入保険制度に加入し、毎年の保険料7.2万円と積立金22.5万円の計29.7万円を支払う場合を試算している。
これによると、保険期間の収入が700万円まで減っても、180万円の補てん金が支払われ、880万円を確保、収入がゼロになっても810万円が補償される。
制度の仕組みを順に見ていくと、基準収入については、経営規模を拡大する場合や過去の売り上げに上昇傾向がある場合は上方修正され、単価の低い作物に転換する場合は下方修正される。
補てん金は、保険金(保険方式)と特約補てん金(積立方式)の組み合わせによって決まり、その上限は基準収入の9割を下回った場合にその下回った額の9割となる。前述の試算は保険料と積立金をそれぞれ複数の選択肢の中から最大補償を選んだもので、収入の減少額にかかわらず、基準収入の8割以上を維持できる。
加入者から徴収した保険料は掛け捨てだが、積立金は補てんに使われない限り、翌年に繰り越せる。
収入保険制度の財源には国の補助が入っている。このため、農家は保険料の50%、積立金の25%の負担で済むことになる。
対象は全ての農産物。けが、為替にも対応
収入保険制度には、収入減少を補てんする既存の類似制度と比べ、二つの大きな特徴がある。
一つが、農家経営の全体をカバーするセーフティーネット(安全網)になっている点だ。例えば、既存の収入減少影響緩和対策(ナラシ対策)は米、麦、大豆など5品目に限定されているが、収入保険制度は栽培管理される全ての農産物(精米、荒茶、梅干しなどの簡易な加工品を含む)を対象としている。
もう一つが、補てんの対象となる収入減少の要因について、自然災害による収量減少はもちろん、農家の経営努力では避けられない価格低下なども幅広く認めている点だ。農水省は、けがや病気によって収穫できない、倉庫に保管中の作物が洪水などで水浸しになって売り物にならない、輸出した時の為替変動で売り上げが落ちたといった事例も含まれるとしている。
収入保険制度に加入できるのは、収入を正確に把握できる青色申告を行っている農家や農業法人などに限られる。青色申告は、正規の簿記(複式簿記)でなく、現金出納帳などに日々の取引と残高を記帳するだけの「簡易な方式」でも構わない。申請時に青色申告の実績が1年分あれば、加入できる。
現場への丁寧な周知が課題
矢倉参院議員が視察
収入保険制度の加入申請は今年の秋から始まる。1月の衆院代表質問で公明党の井上義久幹事長が指摘したように、今後は現場への丁寧な周知と加入促進が課題となる。
そこで矢倉克夫参院議員が16日、埼玉県吉川市とさいたま市を訪ね、収入保険制度に対する期待や要望を関係者から聞いた。五十嵐恵千子・吉川市議、三田部恒明・深谷市議、小森谷優、宮澤則之の両さいたま市議が同行した。
米作りから赤飯やまんじゅうなどの加工・販売までを手掛ける有限会社中井農産センター(吉川市)の浅見明一・代表取締役社長は、「収入保険制度が売り上げをカバーしてくれるので、新しいことに挑戦する若者にとって心強いはずだ」と話す。
一方、同市内でトマトを生産する戸張千束氏は「正直に言うと、収入保険制度の名前を知っている程度。だから、中身よりも掛け金ばかりに目が行ってしまい、メリットを感じづらい」と指摘した。
加入申請などの窓口業務は、各地の農業共済組合などが担当する。埼玉県農業共済組合(さいたま市)の井上清・組合長理事は、収入保険制度と既存の類似制度が併存し、どちらかを選択・加入することになる点に触れ、「農家によって、収入保険制度よりも既存の類似制度の方が最適な場合もある。納得して選んでもらいたい」と強調。その上で各制度の掛け金や補てん金を比較できるシミュレーションファイルをホームページで提供していることを紹介した。
矢倉参院議員は「収入保険制度の生みの親は公明党だ。全国に広がるネットワークの力を生かし、周知に努めていく」と語っていた。