eコラム「北斗七星」

  • 2018.02.28
  • 情勢/社会

公明新聞:2018年2月28日(水)付



大正初期、県営鉄道案が宮崎県議会に提案された。採算を疑問視する意見も多く、賛否は五分と五分。賛成派は、反対派の一人を議場の外に誘い出し、その間に採決するという荒技に出る。1票差の可決だった◆同じころ、久大本線(福岡県久留米市―大分市)建設の陳情を、鉄道院総裁が「山猿でも乗せるのか」と一蹴する。どちらも、弓削信夫著『九州の鉄道おもしろ史』(西日本新聞社)で知った。採算と必要をめぐる議論は難しい◆山猿は言い過ぎだが、地方の人口は減る一方。JR九州も採算(株主)と必要(客)の間で悩んだに違いない。来月17日、大幅減便に踏み切る吉都線(鹿児島県湧水町―宮崎県都城市)沿線は、「定時制高校生が終電に乗れない」と反発した。同社は、平日に臨時便を走らせることを決めた◆北海道、四国、九州のJRは「3島会社」と呼ばれる。JR九州は「地方を見下した傲慢さ」(唐池恒二会長著『本気になって何が悪い』PHP研究所)を感じつつ、多角経営に取り組む。豪華観光列車「ななつ星」のクルーは2カ月間、温泉旅館で布団の上げ下ろし研修を受ける◆山手線のようなドル箱はないが、地方の意地がある。定時制高校生の夢を運ぶ4年間を、そろばんで勘定できるわけがない。同校できょう、卒業式が行われる。(也)

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