e3.11大震災7年 災害時のSNSに功罪
- 2018.03.06
- エンターテイメント/情報
公明新聞:2018年3月6日(火)付
善意が逆効果の例も 専門家「情報見極めを」
世界中の顔も知らない人同士がつながることが可能なインターネット交流サイト(SNS)は、東日本大震災や熊本地震などでも、電話が不通の中での安否確認や、支援物資提供の情報発信などで貢献した。ただ、被災地支援に役立つ一方、弊害もあり、災害時のSNS活用のあり方が問われている。
東日本大震災でSNSが活用された例に、「大震災『村つぎ』リレープロジェクト」がある。居住エリアごとに開設される地域SNSの会員同士が連携。被災地の子どもたちに学用品を贈るため、広島から静岡、東京などを経由して盛岡市まで、全国20の地域SNSの会員が車に支援物資を積みながらリレー方式で送り届けた。
計画に参加した兵庫県の地域SNS「ひょこむ」代表の和崎宏さん(60)は「地域で共通の思いを持った人が『この指止まれ』で集まってきた。1000~2000人が活動に参加したのではないか」と語り、「それぞれの地域で信頼があった。助け合うことは大切なこと」と振り返った。
ただ、困っている人を助けたいという善意が、かえって混乱を招く側面もある。熊本県益城町によると、熊本地震の際、ある避難所で「ミルクを配っている」という投稿が広まり、無くなってしまった後も被災者が殺到した。逆に、避難所で水やおむつが充足した後もSNSの情報拡散で物資が届き続け、余ってしまったこともあったという。
地震直後にツイッターで「ライオンが動物園から逃げた」とうその投稿が拡散したこともあり、対応に当たった町職員は「誤った情報が来ると、住民が右往左往してしまう」と話した。
法政大社会学部でソーシャルメディアなどを専攻する藤代裕之准教授は、災害時のSNS利用について、「家族や友達同士の安否確認にはかなり有効だが、災害時は状況が変わり続け、しばらくたってから状況が分かることもあるので、(情報の判断は)いったん立ち止まることが重要」と指摘。混乱の防止策として、正しい情報と、誤ったり不確実だったりする情報をより分ける専門集団の必要性を提言している。