e米国の鉄鋼輸入制限 貿易戦争を招きかねない。再考を
- 2018.03.07
- 情勢/解説
公明新聞:2018年3月7日(水)付
トランプ大統領は、米国が輸入する鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の追加関税を課す方針を明らかにした。日本を含む多くの国を対象に、この高関税措置を実施するという。貿易戦争につながりかねない危険な判断であると言わざるを得ない。
欧州連合(EU)は、ハーレーダビッドソンのバイクなど、米国を象徴する製品に関税を課すと反発。カナダやオーストラリアなども同様の構えを見せており、早くも報復合戦の様相となっている。
米国内でも、トランプ大統領に再考を求める声が相次いでいる。例えば、米醸造家協会(BA)は、高関税措置でビール缶の原材料となるアルミニウムが値上がりするとの懸念を表明している。
米国の今回の方針は、安全保障に悪影響を及ぼす輸入品を規制できる通商拡大法232条に基づくものであるという。トランプ大統領は、戦闘機や軍艦などの製造に必要な鉄鋼やアルミニウムが各国から安価で大量に輸入されており、これが自国の防衛産業の打撃になっていると説明するが、説得力に欠ける。
なぜなら、マティス米国防長官は、米国産の鉄鋼とアルミニウムの国防関連需要に占める比率はわずか3%にすぎず、カナダなどの同盟国の製品に関税を課すことは「むしろマイナス」であると指摘しているからだ。
米国が輸入している日本製の鉄鋼は、配管用鋼管や鉱山鉄道用のレールなど、米国のインフラ整備に不可欠なものばかりで安全保障とまったく関係がない。日本はこの点を米国に粘り強く説明し、再考を促すべきだ。
米国が今回の方針を示した最大の理由は、中国による鉄鋼の過剰生産問題だろう。中国産の安い鉄鋼が大量に各国に出回り、国際価格を引き下げている。中国産の鉄鋼は、他国を経由し輸入されることもあるため、米国は中国に限定せず、多くの国を対象に輸入制限措置を実施するとしたのではないか。
しかし、この問題は、先進20カ国・地域(G20)を含む33カ国・地域が設置した「鉄鋼グローバル・フォーラム」などで議論が重ねられている。米国の方針は、この国際的な結束を乱すものでもある。