eコラム「北斗七星」

  • 2018.03.12
  • 情勢/社会

公明新聞:2018年3月10日(土)付



学校からの帰り道、交わす言葉が「また、あした」から「また、いつか」に変わる――。この季節、卒業式で誰かが話していたことを思い出す。分かってはいるが、同じ毎日は続かない◆●(歌記号)本当はあなたもここにいるはずだった......。シンガー・ソングライターの半崎美子さんが作詞・作曲した『サクラ~卒業できなかった君へ~』を耳にして、ありふれた日常が愛おしくなった。この歌は、高校時代に同級生を亡くした人の話を、半崎さんが聞いて作ったものだ。卒業できることは"当たり前"のことではないとのメッセージが込められている◆半崎さんは昨年、東日本大震災の被災地、宮城県石巻市をボランティアで訪れた。周囲の勧めで『サクラ~』を歌うと一人の男性が「俺の歌だ」と涙を流していた。それは、同市立大川小学校に通う2人の孫を津波で失った阿部良助さん。卒業できずに逝った孫と重なったという◆阿部さんは大川地区で亡くなった人と同じ数の桜269本を植えた。「孫の代わりに桜を育てる」との思いも込めて。●(歌記号)感謝だけがそっと根を張り続けて生きていく......。阿部さんの気持ちをくみ取って、半崎さんは『感謝の根』を書いた◆7年前の「きょう」、普段通りに「あした」が来ると思っていた。当たり前に流れる時の尊さを今にして思う。(川)

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