e心身の活力が低下した状態 「フレイル」予防し健康長寿

  • 2018.03.16
  • 生活/生活情報
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公明新聞:2018年3月16日(金)付



筋力、気力低下をチェック
千葉・柏市



介護が必要になる手前の状態「フレイル(虚弱)」を防ぐ取り組みが注目されている。早期に対策を取れば健康な状態に戻ることもあるためだ。そこで、介護予防へ、フレイルの兆候をチェックする仕組みを全国に先駆けて導入した千葉県柏市を取材した。

「『よーい、スタート』と言いますから、『タタタタ』を5秒間でたくさん言ってください」。3月上旬、千葉県柏市で開かれた同市社会福祉協議会主催の「フレイルチェック講座」。市内在住の65歳以上の男女約30人が、滑舌の良さや握力などを測るテストを受けていた。

フレイルとは、加齢に伴い筋力や気力、認知機能など心身の活力が低下した状態で、健康と要介護状態の中間的な段階を指す。早めに対処することで、筋力などの機能を取り戻すことができるという。そこで、柏市はフレイルを予防する取り組みを2015年度から始めた。市内に約30カ所ある地域包括支援センターなどで、月1回以上、年40回程度開催している。


11項目の質問 滑舌、握力などテスト


この日の講座は簡単なフレイルチェックからスタート。参加者は両手の親指と人差し指で輪っかをつくり、ふくらはぎの一番太い部分を囲むテストに挑戦した。指の輪っかで隙間ができる人は筋肉量が減っていて、転倒や骨折の恐れがある。

また、「お茶や汁物でむせることがありますか」「昨年と比べて外出の回数は減っていますか」などの11項目の質問に、青と赤のシールを貼って答える「イレブン・チェック」も実施した。赤が多い人ほどフレイルの兆候が強いという。

これらを確認することで、高齢者が自身の心身の状態を知り、改善への取り組みを始めてもらうことが狙いだ。同講座では、フレイルの予防に「栄養」「運動」「社会参加」の重要性を強調。チェック後は、「筋肉のもとになるタンパク質の摂取を」「サークルやボランティアなど自分に合う活動を見つけよう」などのアドバイスが行われた。

参加した70代の女性は「社会性が基準より低かった。一人暮らしなので意識して外出するようにしたい」と語った。

柏市福祉活動推進課の担当者は、15年度の事業開始から参加者数が延べ2100人を超えたことに触れ、「フレイルチェックで赤信号の項目が明確になり、日常生活を見直す人が増えている」と話した。


20自治体で導入、サポーター制度も


自治体の多くは、介護予防事業として筋力トレーニングに重点を置いた運動教室を実施している。しかし、運動習慣のない人が定期的に通い続けることはハードルが高く、長く続かない場合もあった。

このため、高齢者に自身の衰えに気付いてもらい、自発的に健康づくりを促す手段として考案されたのがフレイルチェックだ。これまで神戸市、静岡市の政令市など約20の自治体で介護予防事業として取り入れており、今後さらに広がっていくと見られている。

導入する自治体の一部では、元気な高齢者に事業の支え手になってもらおうと「フレイル予防サポーター」制度も導入している。市内各地にある地域サロンを主な活動拠点として、講座の参加者にフレイルチェックの測定を行ったり、フレイルを予防するための知識などを伝えている。


栄養 運動 社会参加 日頃からの心掛けを


東京大学高齢社会総合研究機構 飯島勝矢教授


高齢化が進む中で、フレイルという心身の活力が低下した状態は、加齢とともに誰にでも起こり得るもので、国内に推定450万人いるともいわれている。このため、私たちはフレイルを予防するための研究を長年進めてきた。千葉県柏市で大規模な健康調査研究を行った結果、予防や健康長寿の大きなカギを握るのが、「栄養」「運動」「社会参加」の三つであることが明らかになった。

そこで、高齢者が日頃からこれらの3要素を意識できるよう「フレイルチェック」を考案した。重要なのは、自身の心身の状態に気付くことで、日常生活の中で継続的に取り入れてもらうことだ。

例えば、外出する時には、いつもより少し速く歩いたり、定期的に仲間と食事を共にする機会をつくってもいいだろう。フレイル対策は一人一人違うので、各自が取り組みやすい形で継続することが大切だ。

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