e若者の自殺防ぐSNS相談
- 2018.03.19
- エンターテイメント/情報
公明新聞:2018年3月17日(土)付
専門家らが無料で対応
厚労省、3月から事業開始
若者の自殺を防ごうと、厚生労働省は自殺対策強化月間の3月から、LINEなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用した相談事業を始めた。同省から委託を受けた民間13団体が公式アカウントを開設し、専門家らが無料で相談に乗っている(団体名やアカウントなどは同省の自殺対策サイトに掲載)。取り組みの現状と国の対策を紹介する。
人間関係や仕事 悩みに寄り添う
「悩み苦しんでいる人に寄り添いケアしたい」。こう力を込めるのは、暴力被害や家庭不和などの問題に直面する若い女性を支援するNPO法人「BONDプロジェクト」の橘ジュン代表だ。
同法人では、10、20代の女性に向けてLINEアカウントを開設し、毎日午後5時~深夜2時まで、無料で相談を受け付けている。常時8人の相談員が対応し、毎日100件を超す相談が寄せられているという。
相談内容は「死にたい」といった直接的なものから、家族や友人との人間関係、仕事の悩みなど多岐にわたる。相談員の中には、過去に同法人の支援を受けて立ち直った女性も。橘代表は「つらい思いを経験しているからこそ、悩みに気付けたり、苦しさを共感できる」と話す。
同法人は相談を待つだけでなく、SNS上で自殺につながるような書き込みを探し出し、「話を聞かせて」とメッセージを送って相談にも結び付けている。
自殺願望のある人の早期発見・対応に有効なSNSだが、相手の表情や口調が分からないため、状況を正しく把握することは難しい。そこで同法人では2月末、LINEでの相談の応じ方について研修合宿を開いた。メンバーが相談者役と対応役に分かれてメッセージを送り合い、言葉の使い方で伝わり方がどう変わるか意見を交わした。
こうした相談員の研修は、委託を受けた団体の多くが力を入れている。例えば、全国SNSカウンセリング協議会(江口清貴、三川剛代表理事)は、全国心理業連合会や関西カウンセリングセンターの協力を得て、4回の研修会を開催し、延べ130人がカウンセリング技術を学んだという。
厚労省は現在、SNSによる相談事業を4月以降も継続できるよう、準備を進めている。同省自殺対策室の鶴見伸司室長補佐は「今後は、相談支援のノウハウ(手法)をまとめたガイドラインの作成や相談員の研修強化を行い、相談事業のレベルアップに取り組みたい」と話した。
文科省も実施へ準備
文部科学省でも、いじめ・自殺相談にSNSを活用する方針で、2018年度からの本格実施をめざしている。17年度補正予算、18年度予算案で計2億5000万円を盛り込み、全国25自治体に相談体制の整備費用を補助する。
文科省によると、SNSの相談窓口では自治体が委託した臨床心理士や教員OBに加え、SNSに詳しい大学生ら若い世代が相談員となる。対象は原則として児童・生徒。受付時間は平日午後5時~10時など、子どもが利用しやすい時間を想定している。
SNS相談については、先行して試験導入した自治体で効果を上げている。長野県が17年9月、公明党長野県本部青年局(局長=中川宏昌県議)の推進により、中高生を対象にLINEを使って相談事業を行った。2週間の試行で、16年度の電話相談数の2倍以上となる547件もの相談が寄せられた。
スマホなどで見知らぬ人との交流増加
国内の自殺者数は09年以降減り続け、17年は2万1321人となったが、自殺が若年層(15~34歳)の死因のトップというのは、主要先進国で日本だけだ。
これまで、自殺予防の相談窓口は電話を中心に行われてきたが、最近の若年層の交流手段は音声通話よりも、スマートフォン(スマホ)を使ってのSNSの活用が圧倒的に多い。
昨年10月には神奈川県座間市で、SNSに自殺願望を投稿した若者が誘い出されて殺害される事件が発生。若年層がSNSを通じて見知らぬ人と交流する実態が鮮明になった。
このため政府は、電話やメールに加え、若者が使い慣れているSNSで悩みを相談できる仕組みづくりなどを検討してきた。
公明党は、SNSを活用した相談体制の構築を強力に推進。17年11月には党文科部会(部会長=浮島智子衆院議員)が安倍晋三首相に申し入れを行った。今年1月の参院代表質問では、山口那津男代表が全国各地に迅速に整備するよう訴えている。