eネットと人権侵害 被害者への迅速な対応さらに
- 2018.03.26
- 情勢/解説
公明新聞:2018年3月26日(月)付
生活の中に定着しているインターネットによって、名誉やプライバシーを侵害される事件が増え続けている。
氏名や住所など個人情報をインターネット上の掲示板に勝手に載せられたり、LINEなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で一方的な誹謗中傷や私的な写真などを流されてしまうといった問題だ。
法務省は先週、人権擁護機関である全国の法務局などが、2017年に救済手続きを始めた事件のうち、インターネットをめぐるものが5年連続で過去最高を記録したことを公表した。
これを受け上川陽子法相は、調査結果を整理・分類し、迅速な救済につながった良い実践事例をまとめ、それらを人権擁護機関で共有可能にする必要があるとの考えを示した。人権侵害は法秩序の基盤を揺るがす。早急な対応を求めたい。
先の法務省の調査によると、昨年のインターネット上の人権侵害は2217件で、その約85%は名誉棄損とプライバシー侵害が占めた。
人に面と向かってはとても言えないような乱暴な言葉でも、インターネット上の書き込みなら匿名でもあり簡単にできてしまう。また、許可無く書き込んだ友人・知人の連絡先が悪用され、思わぬ被害が生じることもある。
さらに、インターネット上に流れている誤った情報を真実だと信じて、それを拡散させて人を傷つける例も後を絶たない。一方、事実であっても公表すべきでない情報もある。少年事件の容疑者は報道では匿名にされているにもかかわらず、心ない人間がインターネット上で実名や住所などを明かすことも問題だ。
言論の自由はインターネットの中でも保障されるが、名誉棄損やプライバシー侵害が許されないのは現実社会と同様であり、刑事責任を問われることもある。どのような言論が人権侵害に当たるかを、国が"事前検閲"することは許されない以上、人権侵害事件には迅速な救済で対応する必要がある。
法務局の相談窓口は人権侵害となった情報の削除手続きなどの対応策を丁寧に教えてくれる。被害に遭った人はすぐに利用してほしい。