e米国の輸入制限 国際ルール守り貿易戦争避けよ

  • 2018.03.27
  • 情勢/解説

公明新聞:2018年3月27日(火)付



米中両国の動向を世界中が注視している。

米国は先週、安全保障上の脅威を理由に、鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の追加関税を発動した。特に鉄鋼生産量が世界一である中国への影響が大きいが、日本も対象に含まれる。

中国に対してはさらに、知的財産権の侵害などを理由に、500億ドル(約5兆2000億円)相当の中国製品に25%の追加関税を課す。

これに対して中国は、米国からの輸入品128品目に最大25%を追加関税とする対抗措置を公表した。両国とも貿易戦争も辞さない構えだ。

世界1、2位の経済大国の動きに市場も警戒している。23日の東京株式市場では、日経平均株価が約5カ月ぶりに2万1000円を割り込んだ。週明け26日は、やや持ち直したものの、動きは鈍い。

欧米の株式市場でも下落傾向が続くなど、動揺が広がっている。世界貿易機関(WTO)のアゼベド事務局長が「回復基調にある世界経済へ打撃となりかねない」と警告した通り、先行き不透明だ。

WTOは、一方的な制裁措置を禁じている。米国が追加関税の根拠とする通商拡大法232条などは、WTO協定違反の可能性が高い。米国には貿易戦争を回避する、国際ルールの順守を求めたい。

米国が強硬姿勢に出た背景に中国による鉄鋼の過剰生産があるのは間違いないが、この問題は、先進20カ国・地域(G20)を含む33カ国・地域が設置した国際的な枠組み「鉄鋼グローバル・フォーラム」で対応すべきだ。

日本への影響はどうか。国内で生産する鉄鋼のうち、米国への輸出は数%程度。継ぎ目のない鋼管や強度が求められる自動車用の鋼材などで多くが高品質だ。米国製品では代替しにくく、直接的な影響は限定的とみられている。

だが、懸念はある。米国市場に入れなくなった鉄鋼製品が供給過剰になり、価格が暴落する恐れがあるからだ。

日本は米国に対し、引き続き関税の適用除外を求めていくべきだ。併せて、米国を除く11カ国が署名した環太平洋連携協定(TPP11)の早期発効を各国に呼び掛け、自由貿易への流れを広げていくことも忘れてはなるまい。

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