e年金入力ミス 言語道断。受給者軽視を改めよ

  • 2018.03.29
  • 情勢/解説

公明新聞:2018年3月29日(木)付



年金制度への信頼を損なう深刻な事態である。

日本年金機構から個人データの入力業務を委託された東京都内の情報処理会社が、入力ミスを重ねていたことが判明した。2月支給の年金で所得税が正しく控除されず、年金受給者の支給額が本来よりも少なくなっていた。対象は10万人を超え、不足額は20億円余りに上る。

年金は老後の大切な支えであり、誤った額を支給するなど言語道断である。年金機構は次の支給日で差額を調整する方針だが、影響を受けた受給者へ丁寧な説明が必要だ。

さらに同社は、再委託を禁じた契約に反し、約500万人分のデータ入力を中国の業者に任せていた。入力ミスはなかったものの、個人情報の流出を招きかねない事態を引き起こしていた。

個人情報は、年金機構が厳重に管理すべきものであり、業務委託する際、厳格なセキュリティー対策が不可欠であることは当然だ。年金機構は情報の流出はないと説明するが、違反行為を見抜けなかった監督責任は非常に重い。

年金機構は入力ミスや再委託の判明後も、代わりの業者が見つからないとの理由で契約を続け、データも提供していた。あまりにずさんであり、受給者軽視も甚だしい。

26日の参院予算委員会での公明党議員の提案を受け、厚生労働省は、外部有識者を含む調査組織を設置することを発表した。委託業者の選定手続きや監督体制などを徹底的に検証し、再発防止策を急ぐべきだ。一般に上場企業では、重要業務を委託する際、委託業者に対する第三者評価を条件にしているが、こうした視点も参考にすべきだろう。

今回は、年金機構が所得税の控除に必要な「扶養親族等申告書」の書式を大幅に変えたため、期限までに返送できない人が続出したことも支給額の誤りにつながった。超高齢社会を迎え、分かりやすい書式や記入法を研究していくことも必要ではないか。

ずさんな事務処理で起きた「消えた年金」問題で旧社会保険庁が解体され、年金機構が発足してからも情報流出や支給漏れなどがやまない。高まる国民の不信をどう解消するか、年金機構の抜本的な意識改革を求めたい。

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