e100万人訪問・調査運動 4テーマのポイント解説(上)
- 2018.04.02
- 生活/生活情報
公明新聞:2018年4月2日(月)付
公明党は、今月から6月までの3カ月間、全議員が「100万人訪問・調査」運動に取り組みます。アンケートで取り上げる4つのテーマについて、問題の背景と公明党の実績を上下2回に分けて解説します。
子育て
背景 教育費負担が課題に 保育所待機児童の解消急務
日本は、総人口(2017年1月1日現在)が8年連続で前年を下回り、減少数は過去最多を更新するなど、本格的な人口減少時代を迎えています。
こうした中、16年の出生者数は統計開始以来初めて100万人を割り込み、1人の女性が一生のうちに産む子どもの数を推定する「合計特殊出生率」も、05年に過去最低の1.26を記録。近年は微増傾向に転じているものの、依然低い水準が続いており、少子化対策の強化は待ったなしです。
国立社会保障・人口問題研究所の調査では、約半数の夫婦が、理想の子どもの数は3人以上と回答するなど、子どもを持ちたいとの願望は衰えていません。しかし、理想の子どもの数を持たない理由を尋ねると、子育てや教育にお金がかかることを挙げる人が最多を占めています。
経済協力開発機構(OECD)によると、日本の教育機関に対する公的支出の割合(14年)は、国内総生産(GDP)の約3.2%で、OECD各国平均の約4.4%を大きく下回っています。この値は、比較可能な加盟34カ国中最下位です。教育支出の多くを家計が負担している現状を表しており、教育費負担の軽減が求められています。
また、認可保育所などに入れない待機児童は約2万6000人(17年4月1日現在)を数え、前年同時期の数を上回っています。働きながら子どもを産み育てられる環境を整備していく上で、保育の受け皿確保は欠かせません。
子育てしやすい社会の実現へ、アンケートで子育て世帯の生の声を吸い上げていきます。
実績
無償化推進をリード 保育の受け皿32万人分確保へ
公明党は他党に先駆けて子育て支援の重要性を訴え、児童手当や出産育児一時金の拡充、乳幼児医療費の無料化など、数多くの支援策を実現してきました。2018年度予算にも公明党の主張が反映されています。
06年には「少子社会トータルプラン」を発表。政府が進める支援策を先取りした提言を行ってきました。特に「幼児教育の無償化」や「給付型奨学金の創設」といった教育費負担の軽減は、この政策提言を基に、10年以上にわたって実現を訴えてきました。
そして、17年末に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」で、3歳から5歳児までの全ての幼稚園、保育所、認定こども園の無償化を20年4月から全面実施することを決定。私立高校授業料の実質無償化も盛り込まれ、20年度までに年収590万円未満の世帯を対象に実施されます。
また、大学生を対象にした給付型奨学金についても、公明党は結党間もない1969年に国会質問で提案し、創設を訴え続けてきました。17年度には2800人を対象に先行実施され、18年度から本格実施されます。
保育所待機児童の解消に向けては、約32万人分の保育の受け皿をつくる「子育て安心プラン」を前倒しし、18年度は約11万人分の運営費を確保。保育人材への処遇改善を後押しします。
自治体が独自に行っている「子ども医療費の助成」に対し、国民健康保険の国庫負担を減額する"罰則(ペナルティー)"の一部廃止も決定。これにより浮いた財源を少子化対策の拡充に活用できるようになりました。
さらに、出産や子育てに関する相談など、必要な支援をワンストップ(1カ所)で受けられる「子育て世代包括支援センター(日本版ネウボラ)」を18年度は200カ所増設するほか、産後の母子に心身のケアなどを行う「産後ケア事業」を520市区町村で行います。
介護
背景 増加する認知症患者 サービスへの理解不十分
2025年には、約650万人に上る団塊の世代が全員75歳を超え、国民の3人に1人が65歳以上となります。
急増する医療や介護などの需要に対し、介護人材は25年に約38万人不足すると予想されています。また、通院することが困難な患者が増えることから、医師が自宅を定期的に訪問して診察し、計画的に治療・看護・健康管理などを行う在宅医療へのニーズも高まるとみられています。
中でも、懸念されているのが、認知症を持つ高齢者の増加です。政府の推計では、認知症の人は25年に675万人に達し、さらに認知症の発症に影響を与える糖尿病の有病率が上昇した場合には730万人に上るとの推計もあります。
ところが、実際に介護が必要な状況になっても、要介護認定や介護保険料の負担、保険給付の支給などについて、高齢者やその家族がどこに相談すべきか、どのようなサービスが受けられるかなど、戸惑う人は少なくありません。
認知症は早期発見が大切ですが、自分の親などにどのような症状が出たら認知症を疑えばいいのかなど、基準がはっきりせず対応に困る人もいます。
実際、認知症の疑いがあってもなかなか病院を受診してくれない親をどのように病院に連れて行くかといった悩みを抱えている人が多いのも現状です。
これまで介護や認知症対策については、介護施設や事業者、社会福祉協議会など介護に従事する人たちへの対応が中心でした。
しかし、多様化するニーズに対応していくには、介護に従事する人たちに加え、サービスを利用する人やその家族、まだ利用していない人の声にも耳を傾ける必要があります。
実績
「地域包括ケア」後押し 全市区町村に初期支援チーム
公明党は、高齢者がたとえ要介護状態になっても、住み慣れた地域で暮らし続けることができる社会をめざしています。具体的には、医療や介護、生活支援サービスなどを一体で受けられる「地域包括ケアシステム」の構築に全力を挙げています。
公明党は2009年、全国の議員が一丸となり「介護総点検」を実施。調査で寄せられた約10万人の声を基に、10年に「新・介護公明ビジョン」をまとめ政府に提出し、介護施設や在宅支援体制、介護労働力の不足解消を訴えました。
このうち介護人材の処遇改善については、賃金体系の整備や研修実施、職場環境の改善に取り組むなど一定要件を満たした事業所において、職員1人当たり月額平均1万2000円相当の処遇改善を15年度に実現。17年度からは、経験などに応じて昇給する仕組みを設けた事業所を対象に、同1万円相当の処遇改善ができるようにしました。
また、政府の「新しい経済政策パッケージ」では、介護サービス事業所で働く勤続10年以上の介護福祉士に月額平均8万円相当の処遇改善を行うための公費投入が盛り込まれ、19年10月から実施されます。
認知症は早期発見・対応が重要であることを踏まえ、認知症の高齢者を支える家族を支援することを目的に、医師や看護師らが自宅を訪ねて適時・適切なサービスを提供する「認知症初期集中支援チーム」を18年度から全ての市区町村に設置します。
さらに公明党は、65歳未満の現役世代が発症する「若年性認知症」にも対応していく考えです。