e茶釜など千年の歴史持つ工芸 天明鋳物 継承・発展へ

  • 2018.04.04
  • 情勢/解説

公明新聞:2018年4月4日(水)付



第2次推進計画を策定
企画展 食器制作し料理盛り付け
発祥の地 栃木・佐野市



栃木県佐野市は3月末、千年以上の歴史を持つ地元発祥の工芸「天明鋳物」を活用した街づくりを加速させるため、「第2次佐野市天明鋳物のまちづくり推進計画」を策定した。2021年度までの4年間で行政と職人、市民が一体となり、郷土が誇る伝統の継承と発展に全力を挙げる。


現代に合った新製品も


優れた美術工芸品として江戸時代に最盛期を誇り、明治年間には日常用具として盛んに鋳造された天明鋳物は、現在も作られている日本最古の鋳物。その技法を現代に受け継ぐ佐野市内の鋳物師は、個人と法人を合わせて10軒に満たない。 佐野市は第2次推進計画の柱の一つに「温故知新のものづくり」を掲げた。茶釜などの伝統的な製品の価値を再評価すると同時に、現代の生活形態に合った新製品の開発と販路の拡大をめざす。同市天明鋳物まちづくり係の林田治美係長は、「伝統を守るために、継承だけではなく活用にも重点を置いた」と語る。

先ごろ開かれた企画展では、天明鋳物の新たな可能性を示した。同展では、4人の鋳物師に食器の制作を依頼し、作品に料理を盛り付けて紹介。来場者からは「鋳物と料理という組み合わせが斬新」「とてもオシャレ。食卓で使いたい」などと好評を博した。

発案した佐野市地域おこし協力隊の大塚由香里さんは、鋳物師の協力を得るために何度も足を運んだ。初めは戸惑っていた職人たちも最後は快諾してくれ、「これを機に身近な作品にも挑戦したい」と話していたという。大塚さんは「素人には手が出しにくいという先入観を払い、若い女性にも興味を持ってほしかった」と話していた。

作品を出展した鋳物師の若林秀真さんは、11年前に伝承保存会を立ち上げ、先人が残した鋳造道具の整理に取り組んでいる。その活動は2013年、ユネスコの「プロジェクト未来遺産」に登録された。若林さんは「千年先に何ができるかを官民一体で追求したい」と述べ、佐野市の推進計画の策定を歓迎していた。


公明の提案で担当係を新設


公明党議員会(若田部治彦代表)はこれまで、天明鋳物を街づくりの中核に位置付けるよう議会で訴え、推進計画の策定をリード。14年12月の定例会では、本郷淳一議員が「行政部門を統括する専門の課や窓口が必要だ」と提案し、天明鋳物まちづくり係の新設を後押しした。

天明鋳物 下野国佐野天明(佐野市の古称)で作られた鋳物。天慶年間(938~947年)に豪族の藤原秀郷の命により、河内国丹南(大阪府)から移住した鋳物師が武器などを鋳造したのが起源とされる。作品は湯釜、梵鐘、灯籠、鍋、ベーゴマなど種類が多く、特に湯釜は茶道の世界で有名で、夏みかんの皮のような凹凸の力強い肌合いが特徴。

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