e問われる公文書管理

  • 2018.04.10
  • 政治/国会

公明新聞:2018年4月10日(火)付



「森友」「イラク日報」問題から



学校法人「森友学園」を巡る財務省の決裁文書の改ざんや、防衛省における陸上自衛隊のイラク派遣時の日報問題など、公文書に関する不祥事が相次いでいる。これまでの経緯を振り返り、問題点を整理する。


相次ぐ不祥事


"廃棄済み文書"が存在 政府、昨年末に管理指針を改正


政府が管理する公文書は、2011年施行の公文書管理法に基づき、行政職員が作成する「行政文書」、独立行政法人等の職員らが作成する「法人文書」、歴史的資料として重要な文書のうち国立公文書館などに移管された「特定歴史公文書等」に分類される。公文書は「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」(同法1条)としての役割を担うとともに、歴史的事実を後世に正しく伝える意義を持つ。

今回、焦点となっているのは行政文書で、その内容に応じて5年や10年などの保存期間が設けられている。文書のリストは管理簿にまとめられ、インターネットなどで公表し、情報公開請求にも応じる。保存期間が過ぎた文書は、国立公文書館などに移管される。

この公文書の扱いを巡って不祥事が続いている。

昨年、国会が南スーダン国連平和維持活動(PKO)の検証を試みた際、陸上自衛隊はPKOの日報を廃棄済みと答弁したが、後に存在が判明し、当時の防衛相が辞任。同じく、森友学園への国有地売却についても、財務省は資料を全て廃棄したと答えていたが、後に内部文書が見つかった。

さらに、学校法人「加計学園」が国家戦略特区に獣医学部を新設する件でも、政府が認めていなかった文書の存在が文部科学省の調査で明らかになった。

そこで政府は昨年末、各府省庁が公文書を管理する際のガイドライン(指針)を改正。今月から運用が始まった。

具体的には、政策立案や事業の実施に関する打ち合わせなどの記録は、行政文書として原則1年以上の保存を義務付けた。

さらに、これまで各府省庁で対象範囲が異なっていた保存期間1年未満の書類についても、改正指針では対象範囲を絞り込んだ。これは、南スーダンPKOの日報問題で、陸自が日報を保存期間1年未満の資料として廃棄したと答弁していたことを受けたものだ。

指針の改正により、防衛省は自衛隊部隊の日報を10年以上保存することになった。


新たな問題


改ざん、現行法の想定外 陸自の大幅な報告遅れも判明


今、指針の改正だけでは不十分との声が相次いでいる。同指針が、森友学園を巡る財務省の決裁文書改ざん問題が発覚する前に策定されたものであるからだ。

この決裁文書は、保存期間が30年だったことから昨年、国会議員に提示されていた。だが、今年3月、決裁文書の改ざん疑惑が浮上して当時の佐川宣寿国税庁長官が辞任。同省は14の文書で改ざんを公表し、衆参予算委員会で佐川氏の証人喚問が行われる事態となった。

公文書管理法や改正指針では、文書の改ざんを想定していない。それだけに、財務省による改ざん行為は国民への信頼を裏切り、わが国の情報公開制度の根幹を揺るがすものと厳しく批判されている。

さらに今月、防衛省が昨年2月に国会答弁で存在を否定していた陸自のイラク派遣時の日報が見つかるという問題も発生した。

日報について同省は、昨年3月時点で存在を確認していたと発表。陸自は約1年間、日報の存在を防衛相に報告しなかった上、「残っていないと確認した」という防衛相の答弁との食い違いを放置し続けていたことになる。

防衛相に対する大幅な報告の遅れについては、文民統制(シビリアンコントロール)の観点からも極めて深刻な事態であると指摘されている。

さらに9日には、陸自の南スーダンPKOでの日報1年分以上が新たに発見された。これには、防衛省が「存在しない」としていた期間の日報も含まれていた。


与党の対応


ワーキングチーム設置。法改正も視野に再発防止策を議論


公文書管理のあり方について、公明党の山口那津男代表は3日、「政府の情報は国民の知る権利に対応する重要な民主主義の基礎資料だ。適正管理ができるようにしないといけない」と力説。「効率的で、改ざんなどが行われない仕組み、長期保存といった課題を議論していくべきだ」と強調した。

また、自民、公明の与党両党は5日、「与党公文書管理の改革に関するワーキングチーム(WT)」を設置した。行政や公文書に対する信頼回復へ、与党間での議論を通じて公文書を巡る問題を幅広く検証し、課題を洗い出していく方針だ。その上で、公文書管理法の改正なども視野に入れ、文書の改ざん防止策など実効性ある対策を打ち出していく。

これらに先立ち、安倍晋三首相は3月23日、財務省の決裁文書改ざんを受け、府省庁での電子決裁システムへの移行を加速させるよう閣僚に指示した。併せて、公文書管理の改正指針を徹底することも確認した。

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