e裁判のIT化 民事訴訟の負担軽減に必要

  • 2018.04.10
  • 情勢/解説

公明新聞:2018年4月10日(火)付



経済活動や社会生活の中で法律トラブルの発生は避けられない。社会を円滑に動かすためには紛争の早期解決が必要で、信頼できる裁判制度の構築は国の責務である。

そのため政府は、民事裁判の利用者の負担軽減と審理の迅速化をめざし、訴訟手続きのIT(情報技術)化に向けた検討を2018年度から本格化させる。訴状などの「紙」の使用をなくし、裁判所への「出頭」もテレビ会議などで減らす方向だ。利用者本位の制度設計を期待したい。

民事訴訟は原告からの訴状や証拠書類の提出から始まる。現在は紙による提出になっているため、裁判所に持ち込むか、郵送やファクシミリを利用するしかない。ネットでの提出もできるが裁判所はそれを印刷して紙で保管している。複雑な事件では膨大な紙が提出されるため保管場所にも困る。

しかし、「紙」が電子情報化されると、提出は24時間、365日可能となり、必要な時にそれらの情報を検索したり確認することもできる。弁護士にとっては紙の作成に伴う雑務から解き放され、証拠調べや法解釈など本来の業務に専念できることになる。

また、当事者双方が弁護士を選任した事件は一昨年で43%程度であり、残りは一方または双方が弁護士ではない本人訴訟となっている。法律の素人にとって訴状などの作成は大きな負担であるが、IT化されれば、裁判所のサイトからフォームに従って書き込む方法も考えられる。

遠隔地の裁判所への出頭も大変だ。現在利用されている電話会議やテレビ会議は、裁判所と裁判所の間で運用されているが、IT化によって弁護士事務所や会社の会議室からでも利用可能になれば、負担軽減は大きく進む。

世界銀行がビジネス環境について実施した昨年の調査によると、裁判所手続きの利便性はOECD(経済協力開発機構)35カ国中、日本は23位で、IT化の遅れが主な原因だった。経済成長のためにも急がなければならない。

裁判は人の一生や企業の消長を左右する。情報セキュリティーの問題など検討課題は多いが、安全性の高いIT化によって、裁判の公正性もしっかり確保する必要がある。

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