eシリア化学兵器 使用者特定へ日本の提案は重要

  • 2018.04.26
  • 情勢/解説

公明新聞:2018年4月26日(木)付



猛毒の化学物質を用いたサリン、VXガスなどの化学兵器。ひとたび使われれば、呼吸困難などを引き起こし、長く苦しみながら死に至る、極めて非人道的な兵器である。

だからこそ、1997年に発効した化学兵器禁止条約で、その開発や使用などを全面的に禁じた。世界のほぼ全ての192カ国が加盟している。加盟各国が同条約を守っているかどうかを確認する化学兵器禁止機関(OPCW)も設置されている。

ところが、内戦が続くシリアで化学兵器が何度も使われている。国際社会は、これを看過してはならない。

OPCWは21日、化学兵器が使われた疑いのあるシリアの首都ダマスカス近郊の東グータ地区で、調査を開始した。だが、同地区で化学兵器が使われたとされるのは、もう2週間も前だ。証拠の収集が困難な上に、使用者を特定しないため、真相がどこまで明らかになるのか不透明だ。

そのため、日本政府は、22日から23日までカナダのトロントで開かれていた主要7カ国(G7)外相会合で、化学兵器の使用者を特定する新しい国際的な枠組みの設置を提起した。国連やOPCWと連携し、各国の警察関係者や化学、医療などの各分野の専門家らで構成される形を想定しているという。

化学兵器を使った者の責任を不問に付したままでいれば、違法行為をしているとの意識は薄れ、さらなる使用を許してしまいかねない。

かつて、国連とOPCWは、国連安全保障理事会(安保理)の決議に基づき、シリアでの化学兵器の使用者を特定する合同調査機関(JIM)を、2015年に創設した。

しかし、化学兵器を使ったのはアサド政権であると指摘したJIMに、同政権の後ろ盾となっているロシアが猛反発。ロシアは昨年11月、JIMの任務を延長する安保理決議に拒否権を行使し、閉鎖に追い込んだ。使用者を特定する安保理の取り組みは今や、機能不全に陥っている。

それだけに、日本政府の提案は重要である。G7外相会合の参加国も、日本政府と認識を共有したという。化学兵器を二度と使わせない国際社会の努力を、日本がリードする必要がある。

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