e研究活動の生産性 日本は低水準。国際連携さらに

  • 2018.04.27
  • 情勢/解説

公明新聞:2018年4月27日(金)付



オランダの大手学術出版社エルゼビアが、主要国の研究活動の生産性を比較した報告書を公表した。この中で目を引くのが、日本の生産性の低さである。

報告書では、主に2012年から16年に世界で発表された論文数を基に、論文の引用回数や新たに生まれた特許数といった観点で生産性を分析している。

このうち、大学や企業など官民を合わせた日本の研究開発投資の総額は米国と中国に続き3位だった。しかし、投資額約1億円当たりの論文数では主要9カ国中で最低の0.7本で、トップのカナダとは5倍以上の開きがある。科学技術立国をめざす日本にとって憂慮すべき事態といえよう。

他の主要国と日本との違いはどこにあるのか。

生産性の高い研究を実現している国は、国境を越えた共同研究に積極的である。持ち味の違う者同士の競争から、アイデアの種が生まれることが少なくないからだ。温暖化の防止研究で、高効率の火力発電など画期的な産業技術が考案されたのは一例だ。

日本でも国際共同研究に注目する動きはある。東京電力福島第1原発の廃炉に向け、廃棄物の最適な処理を実現させるための研究が、廃炉国際共同研究センター(福島県)と経済協力開発機構との間でスタートした。

しかし、全体的な動きは鈍く、政府内でも「世界では、国際頭脳循環の活発化で国際的な研究網の構築が進展しているが、わが国はその流れから取り残されている」との危機感が強い。

政府も手をこまねいているわけではない。15年度に「国際共同研究加速基金」を創設し、研究者の派遣事業を実施、これまでに約900件以上を採択した。研究活動の生産性を国際水準に近づけるには、こうした取り組みに一層注力する必要がある。

主要国に比べ、日本は科学技術予算の伸び率が低いことも指摘しておきたい。政府は「科学技術イノベーション」を成長戦略の重要な柱と位置付け、16年度からの5年間で関係予算を計26兆円にする基本計画を掲げている。着実に取り組むことで、日本の研究基盤の強化につなげたい。

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