eコラム「北斗七星」

  • 2018.05.02
  • 情勢/社会

公明新聞:2018年5月2日(水)付



坊主頭の男が、しま模様のどてら姿で腕を組み、人懐っこい笑顔を浮かべている。仙台を訪れたことがある人ならば、その写真に見覚えがあるかもしれない。福の神こと「仙台四郎」だ◆四郎は江戸末期から明治にかけて仙台に実在した人物である。知的障がいがあったが、いつもニコニコしながら街を歩いては、勝手に店の前の掃除をしたり、水まきをした。立ち寄った店は繁盛し、抱かれた子どもは丈夫に育つといわれ、四郎は「商売繁盛の福の神」と噂された◆一方、四郎をいじめた店は没落したとの伝説も。心の純粋な四郎が誠実な商人を見分けたとも、分け隔てなく接客する店がはやったとも解されている。古来、日本には「障がい児が生まれた家は栄える」との福子伝説があった。障がいのある子のため、家族が力を合わせて働くから、福を呼び寄せたように見えたという◆翻って現代、知的障がい者らから、子どもを産み育てる権利を奪う法律が、つい22年前まで存在していた。"不良な子孫の出生防止"などを目的とした旧優生保護法だ。障がいを理由に不妊手術が行われてきた事実に目を背けてはならない◆旧厚生省が自治体へ手術を促したが、背景には社会の障がいへの偏見や差別があった。悲劇を繰り返さぬために肝に銘じたい。命に優劣のないことを。(川)

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