e次世代の医療 データ活用へ国民理解広げよ
- 2018.05.08
- 情勢/解説
2018年5月8日
日本は世界一の超高齢社会であり、また、健康寿命も世界のトップクラスとなっている。健康寿命とは日常生活に支障のない期間のことだ。
健康寿命を延ばすため政府は、病院など医療機関が保有する国民・患者に関する膨大なデータを、医療ビッグデータとして治療や新薬の研究開発に提供できる新体制の構築に取り掛かる。11日から施行される次世代医療基盤法(基盤法)に基づき2020年の本格稼働をめざす。
高齢化が進む国々の模範となるような次世代医療の姿を示してほしい。
もとより医療情報は個人情報であり、基盤法は特定の個人が識別できないように匿名加工することを定め、それを実施できるのは国が認定した事業者に限った。匿名加工された医療ビッグデータを用いた研究が進めば、健康・医療・介護の分野で大きな成果が期待できる。そのためには、できるだけ多くのデータ提供が望ましいが、データを出すかどうかはそれぞれの医療機関の任意であり、また、国民・患者本人も拒否できる。
「オールジャパンのデータ利活用基盤」をめざす政府としては、医療ビッグデータの可能性を国民に丁寧に説明し、データ提供の裾野を大きく広げなければならない。
そこで必要なのは、研究成果がメリットとして還元されることを国民・患者に理解してもらうことである。
期待されるメリットとしては、膨大な症例を検討して患者一人一人に最適の医療を提供したり、感染症の発生・受診状況を速やかに把握して感染拡大阻止へ早期に対応することだ。
また、職場での健康診断、病院での治療、薬局での医薬品購入など、ばらばらに保有されているデータを個人ごとに一つに束ねることで、効率的な健康管理の道も開ける。
新薬や医療機器の開発も効率的になり、AI(人工知能)による診療支援など新産業の創出も展望できる。
2017年版「高齢社会白書」によると、01年から13年の間では、健康寿命は延びてはいるが、平均寿命の延びより小さかった。
活力ある社会づくりのために、国を挙げた不断の研究開発が迫られている。