e海洋ごみ問題/プラスチック汚染防ぐ対策急げ
- 2018.05.10
- 情勢/解説
2018年5月10日
海洋ごみは、地球温暖化に並ぶ深刻な環境問題だ。
中でも、ペットボトルやレジ袋のような使い捨てのプラスチック製品による海洋汚染は、昨年6月にイタリアのボローニャで開かれた先進7カ国(G7)環境相会合において、「地球規模の脅威」であるとの懸念が示されたことを、今一度想起したい。
その実態も明らかになりつつある。国連環境計画(UNEP)と日本の国立研究開発法人・海洋研究開発機構(JAMSTEC)は今月5日までに、1982年から2015年までに実施された5010回分の海洋ごみに関する調査結果をまとめた。
それによれば、太平洋やインド洋などで確認されたごみを種類別に見ると、プラスチックが全体の33%と最も多く、そのうちの89%を使い捨てのプラスチック製品が占める。こうしたごみは、日本に近い太平洋・マリアナ海溝の水深1万898メートルの場所でも確認されたというから驚きだ。
UNEPは「プラスチックごみをウミガメや海鳥などが餌と間違ってのみ込んだり、ごみに絡まって窒息死したりすることで生態系に悪影響が出る」と警告している。
また、海に流れ込んだプラスチックごみは、風や紫外線によって粉々に砕け、直径5ミリメートル以下のマイクロプラスチックとなる。これを貝や魚などが食べると、体内に有害物質を蓄積する恐れがある。
UNEPによると、海のプラスチックごみは、50年には魚の量より多くなるという試算もあるという。だからこそ、国際的な取り組みを急がなければならない。
国連は専門家グループを設置し、対策を検討している。来年3月の国連環境総会で、各国に具体策を報告する予定だ。欧州連合(EU)は、使い捨てのプラスチック包装容器の規制を加盟国に義務付け、30年までに全廃する。洗顔料や歯磨き粉に含まれる「マイクロビーズ」と呼ばれるプラスチック粒子も禁じる方針だ。米国もマイクロビーズの使用を段階的に禁止する。
日本もこうした動きに乗り遅れてはならない。使い捨てプラスチック製品の削減や、海のプラスチックごみの国際的な監視体制の整備を、日本がリードしていきたい。