e内外情勢調査会での山口代表の講演・質疑(要旨)
- 2018.05.23
- 情勢/解説
2018年5月23日
連立で役割果たす公明
公明党の山口那津男代表は21日、都内で開かれた内外情勢調査会の会合で講演し、公明党の特長や北朝鮮問題、当面の政治課題について見解を述べた。講演・質疑の要旨を紹介する。
公明党の特長
「人間主義」の理念掲げ 対話通じ小さな声 丹念に拾う
公明党は1964年の結党以来、一貫して議員と党員の全国組織を持ち、それがネットワークとして機能している。これが最も政党らしい、公明党の特長だ。たとえ小さな声でもしっかり受け止めて、政治の過程に反映していく「大衆とともに」の立党精神が今も党に生きている。
政策分野でも多大な実績を積み重ねてきた。政策の理念に掲げているのは、生命、生活、生存を最大に尊重する「人間主義」だ。公明党が平和、福祉、教育、環境の党と言われるのも、この理念を掲げているからだ。結党以来、貫いてきた、このアイデンティティー、役割は、今後もいささかも揺らぐことはない。
自公連立政権で国政が安定している中、公明党が果たす役割は極めて重い。20日に秋田市で開かれた党の会合で秋田県知事が「自民党が頑丈な車体と強力なエンジンを持っているとすれば、公明党はアクセルとハンドルを握っている。ここが大事な役割だ」と評していた。急ブレーキや急発進は事故のもとだ。アクセルでスピードをコントロールしながら、ハンドルさばきで道を外れないようにする。この公明党の役割を、これからもしっかり保っていきたい。
こうした公明党の強みを生かして、今、党を挙げて取り組んでいるのが「100万人訪問・調査」運動だ。介護、子育て、中小企業、防災・減災といった国民の関心の高い政策分野でアンケートを行っている。一対一で対話することが大事であり、その中でいろいろな声を丹念に拾っていくことが地に足の着いた政党の大事な活動だ。
この運動の結果を集約して、来年の統一地方選、参院選だけでなく、その後の政策展開にも中長期的な視野を持ちながら生かしていきたい。地道で着実な日常活動を重ねながら、国民の期待に応えていく。
北朝鮮問題
拉致解決へ集中的に 日ロ、米朝会談の成果に期待
今、北朝鮮を巡る外交案件が焦眉の急だ。日本人の拉致問題については、9日に行われた日中韓サミット(首脳会議)で中韓両国の首脳から理解が得られ、トランプ米大統領も6月12日の米朝首脳会談で取り上げると明言している。
しかし拉致問題は、当事者である日本が主体的に解決に乗り出さないといけない。政府は日朝首脳会談を開いて、国際社会が共有する核・ミサイル問題に加えて拉致問題の解決にも集中して取り組み、成果を上げてもらいたい。北朝鮮への圧力の先には、対話を通じて国交正常化を成し遂げ、共に歩む状況をつくり出す目標を視野に入れているので、与党としても、しっかり支えていく。
日中関係では、5月10日に自民、公明の代表者が中国の李克強首相と会談した。その際、李首相から「中国には『雨後の晴天』という言葉がある。雨風を経験した後は、美しい未来が待っているという意味だ。日中関係改善の流れが揺るがぬものになるよう、ともどもに努力していこう」とあった。
ここで大事なことは、首脳往来を遂げるとともに、揺るぎない関係をつくり出すために、政府以外の交流のパイプや信頼の絆が多層的につくられていくことだ。公明党は一貫して中国共産党との継続的な交流を重ねてきた。民間でも交流がつくられてきたが、時代の進展もあり世代交代の時が来ている。李首相は「交流予備軍」と言っていたが、若い世代の交流の芽を育てていくことが重要だ。
日ロ関係の発展では、北方四島での元島民の墓参や共同経済活動など、両国のニーズがかみ合うところから実績を重ね、平和条約締結へと進めてもらいたい。
26日にはロシアで日ロ首脳会談が行われる予定だ。自公連立政権と、プーチン政権という安定政権の下での会談の機会を生かすべきだ。北朝鮮問題への対応でも成果を上げ、それを基にして、6月上旬にカナダで開催されるG7サミット(主要7カ国首脳会議)での各国との連携強化につなげてほしい。
当面の政治課題
公文書管理 改革急げ 受動喫煙防止へ法改正に努力
森友学園に関する財務省の決裁文書改ざんや、加計学園の獣医学部新設、防衛省の日報問題を巡り、国会では事実解明に相当な時間を割いてきた。
失われた行政への信頼を取り戻すために、政府は今後の振る舞いをただしてもらいたい。また、疑惑を招かない仕組みも必要だ。そうした成果をそろそろ打ち出していくべきではないか。
公文書管理のあり方を巡っては、与党としてもワーキングチームをつくって議論し、政府に「中間報告」を提出した。公文書管理のあり方や行政組織の立て直しについて、首相が責任を持ってやり遂げてもらいたい。
受動喫煙防止対策として健康増進法改正案も議論されている。受動喫煙を禁止、制限していく世界の潮流を踏まえるべきだという意見が圧倒的に多い。制度実施までには準備が必要なので早期成立に努力していく。東京五輪・パラリンピックが行われる東京都が6月議会で独自の条例案を出す姿勢は歓迎すべきだ。
2019年10月の消費税率10%への引き上げを確実に実施し、その使途として幼児教育や高等教育の無償化などに充てることを決めた。経済が回復している中、中長期的な視野で、少子高齢化対策や地方創生を着実に成し遂げる腰を据えた取り組みを進めていく。
消費税率引き上げに当たっては、生活者に痛税感が及ばないよう、軽減税率を実施すると法律で決めた。ただ、事業者には実務上の不安や懸念もあるので、実務的な説明や必要な支援を丁寧に行っていく必要がある。8%への引き上げで個人消費が大きく減った教訓を踏まえ、経済全体が腰折れしないよう需要の変動を見据えた対策も必要だ。
憲法改正を巡る議論で公明党は、国民主権、基本的人権の尊重、恒久平和主義の3原理を今後も堅持していく。その上で、時代の進展によって憲法に盛り込むべき価値があれば、それを加える加憲の立場だ。
9条への自衛隊の明記については、今や国民の大多数が自衛隊を容認していることから、改正をしなくてはならない状況ではないと思っている。いずれにしても憲法改正には国民の理解、議論の成熟がなければならない。国会の憲法審査会で議論を深め、国民の理解が伴う努力が必要だ。