e発症から重度まで 認知症切れ目なく支援

  • 2018.05.25
  • 情勢/テクノロジー
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2018年5月25日



京都府が総合センター

医療・介護を1カ所で提供



京都府は、認知症の早期診断から介護までの支援をワンストップ(1カ所)で提供する「京都認知症総合センター」を今春、宇治市内に開設した。全国初の施設で、府議会公明党も推進してきたものだ。切れ目のない認知症支援をめざす府の取り組みを紹介する。

認知症の「発症」から「診断」「介護」の各過程で適切な助言や支援の手が届かず症状が進んでしまう高齢者は多い。

例えば、認知症の疑いがありながら診断・治療を受けずにいる人。また、認知症初期と診断された人でも、介護サービスを利用するまでの期間の支援が不十分なため、日常生活に支障を来している人もいる。

そこで、認知症の人を切れ目なく支援するため、今年3月に開設されたのが「京都認知症総合センター」だ。社会福祉法人・悠仁福祉会が京都府の補助を受けて整備した。

センターは、地上4階建て、延べ床面積約1360平方メートル。医療・介護など複数の施設が集約化されており、認知症の発症初期から介護ケアまで、状況に応じた適切な支援をワンストップで提供できるのが最大の特徴だ。

府高齢者支援課の杉本圭哉・認知症総合戦略担当課長は「なじみの場所で、なじみのスタッフから継続した支援を受けられることで、利用者の安心につなげたい」と説明する。


常設型「カフェ」で当事者の交流も


センター内には「物忘れ外来」の専門診療所があり、診断やその後の治療を一貫して担う。地域のかかりつけ医などとも連携し、認知症の疑いのある人の早期診断・治療にもつなげている。

一方、早期診断を受けた初期の認知症の人向けには、月曜~土曜まで利用できる「常設型」の認知症カフェを開設。利用者は音楽療法を含むプログラムを体験したり、当事者や家族、支援者同士の交流を楽しむことができる。

カフェは1日平均で10人程度の利用があり、前川貴司施設長は「認知症の利用者や家族から『当事者同士が話し合える、こういう常設型の場所がほしかった』との声が寄せられている。交流を通して、当事者の精神的な孤立を防ぎたい」と話す。

介護が必要になった場合、デイサービスやショートステイ、訪問介護ステーションによる在宅支援も利用することができる。症状が進行した場合も、グループホームや特別養護老人ホームの入所サービスもある。

府は今後、認知症総合センターに準じた機能を持つ認知症ケアセンターを、府内の他の地域にも広げていく方針だ。


初期の人に助言や情報提供 「リンクワーカー」養成


切れ目のない支援の一環として、府はワンストップ拠点の整備に加え、認知症初期の人を支える「リンクワーカー」の養成も進めている。

リンクワーカーは、英国のスコットランドで採用されている制度。ワーカーは認知症と診断された人に対し、病気や公的サービスに関する情報提供や専門機関の紹介、社会参加の応援などを1年間無償で行う。

府は、スコットランドの事例を参考に、2016年2月から独自に"京都版"のリンクワーカーの養成研修を開始。府のワーカーは、地域の医療機関からの紹介や、自治体に設置された認知症初期集中支援チーム(支援期間は最長6カ月)から引き継ぐ形で、初期の人の精神的なサポートや、地域や各種の支援制度とのつなぎ役を1年間務める。

これまでに地域包括支援センターや介護施設などの職員が研修を受け、現在、府と5市町村に計12人のワーカーが配置されている。実際の支援は、まだ試行錯誤の段階だが、府高齢者支援課の谷内穂高副課長は「今年は認知症の人の意思決定を支援するための研修を行う。認知症の人に寄り添いながら、初期支援を充実させていきたい」と話す。


東京都健康長寿医療センター 粟田主一研究部長の話


認知症と診断された後、本人の視点に立った支援が不足し、"空白期間"として問題視されている。そこを支援するリンクワーカー養成の取り組みは評価できる。他の自治体も初期集中支援チームの支援期間の延長など、何らかの対応を取るべきではないか。

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