e地方企業の求人支援 移住希望者への情報発信が鍵
- 2018.05.28
- 情勢/解説
2018年5月26日
地方への移住を望む若者をどう呼び込むか。とりわけ就労環境に関する情報を積極的に発信することに知恵を絞る必要がある。
若者の地方移住の促進策について、政府の有識者会議が報告書案を取りまとめた。近く梶山弘志地方創生担当相に提出され、政府が6月に策定する地方創生施策の基本方針に反映される予定だ。
報告書案の大きな柱となっているのが、Uターンなど大都市圏から地方へ移住するための施策の強化である。
東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県)は、昨年1年間に12万人の転入超過となった。その大半は19歳から29歳までの若者だ。
一方で、地方移住に対する若者の関心も高い。認定NPO法人ふるさと回帰支援センターを利用した人のうち、40代までが占める割合は増加傾向にある。「静かな環境で仕事に専念したい」「豊かな自然の中で子育てしたい」など理由はさまざまだ。
こうしたニーズに的確に応えることで、東京圏一極集中の流れを少しでも変え、地方創生につながることが期待できよう。
特に若者にとって働く場の確保が重要だ。その意味で注目したいのが、有識者会議の報告書案が地方の中小企業による求人活動を支援する取り組みを提言していることだ。
例えば、地方の求人情報を網羅したウェブサイトの創設である。地方には、独自の技術で世界のトップシェアを占めるような中小企業も少なくないが、情報発信力で東京圏の大企業に及ばず、十分に認知されているとは言い難い。また、地方の中小企業にとって、大手の就職情報サイトを活用するにはコスト的に無理があるという面もある。
人口減少、少子高齢化のスピードは地方ほど速く、中小企業の人手不足は深刻だ。こうした中で、移住を希望する若者と地方の中小企業を結び付ける取り組みを進める意義は大きい。併せて、ハローワークでの相談体制の拡充も検討してほしい。
地方においては、高校卒業までに地元企業の見学会を実施することも重要ではないか。進学や就職で大都市圏に転居した若者が地方移住を希望する際に役立つであろう。