e認知症サポーター 1000万人突破

  • 2018.05.28
  • 生活/生活情報
[画像]メインイメージ

2018年5月27日



思いやりの心で地域を包もう

"カフェ"運営など多彩な活躍



"思いやりの心"で地域を包もう! 身近にいる認知症の人や家族を見守り、支える「認知症サポーター」(以下、サポーター)が、今年3月末で1000万人を超えました。高齢化の進展に伴い、認知症が身近な病気となる中、さらなる活躍が期待されています。


「分かり合える仲間」


24日午前、相模原市にある相原高齢者支援センターの一室から、和やかな笑い声が響いてきました。

中で行われていたのは、認知症の人や家族が悩みを語り合ったり、情報交換したりする「認知症カフェ」。サポーターらでつくる「じょいふるカフェ会」(木村俊明代表)が2015年から定期開催しています。この日は十数人が集まっていました。

常連の一人で、認知症の妻がいる80代男性は、サポーターについて「日頃の苦労を親身になって聞いてくれて、うれしい。分かり合える仲間です」と話してくれました。そばでは、サポーターの松岡志峰さんが「自分たちも、介護の大変さなど、皆さんから学ぶことが多いです」と笑顔で返しました。

同団体は、認知症カフェのほか、介護予防教室や野菜栽培などを通じ、交流の場を積極的に作ってきました。こうした取り組みが評価され、17年2月にサポーター養成の事務局を務める「全国キャラバン・メイト連絡協議会」から表彰されました。

サポーターの養成や活用に熱心な自治体が増えています。

例えば、福井県若狭町は人口約1万5000人に対して、サポーターがその8割に当たる延べ1万2000人に上っています。受講者を募って会場などで行う従来の養成講座に加え、看護師が見守りの一環で高齢者宅を訪ねた際に、その場で行う"一対一の出前講座"が好評を得ています。

また、静岡県富士宮市では14年から、認知症の人や家族、さらに福祉関係者らが全国から集まり、ソフトボール大会を開催しています。サポーターが運営に積極的に携わり、市も後押ししています。今年は約250人が参加しました。打者が一塁ではなく、三塁に走り出すなどのハプニングが続出する中、皆で楽しみながら汗を流しました。


自治体や企業が無料で養成講座

接し方の基本を学ぶ


サポーターは、05年度に厚生労働省が創設したボランティア制度です。自治体や企業などが実施する無料の養成講座を受ければ、資格を得られます。

講座は約90分の座学。認知症と加齢による物忘れの違いや、早期発見・診断によって進行を遅らせることができる場合があること、さらに、本人への接し方で心掛けたいポイントなどを学びます。

サポーターにはオレンジリングが渡されます。これは「認知症の人を応援します」との意思を示す"目印"です。地域や職場などに認知症の人や家族がいれば、具体的な援助はできなくても、まずは温かい目で見守っていくことが期待されています。

厚労省によると、団塊の世代の全員が75歳以上となる25年には、認知症の人数が約700万人に達すると想定されています。こうした中、政府は「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)に基づき、サポーターを20年度末までに1200万人養成することをめざしています。


180528_03.jpg


認知症で基本法制定へ

公明 対策推進本部が骨子案


公明党は、認知症施策の充実に一貫して取り組んできました。18日には、増加する認知症の人を社会全体で支えていくため、党認知症対策推進本部(本部長=古屋範子副代表)が「認知症施策推進基本法案」の骨子案をまとめました。

認知症施策は保健、医療、介護だけでなく、教育、街づくりなど多岐にわたります。そこで公明党は、国や自治体がこれらを総合的に推進する根拠となる基本法の制定をめざしています。

骨子案では「認知症の人が尊厳を保持しつつ地域社会を構成する一員として尊重される社会の構築」などを基本理念に明示しました。支援対象には本人に加え、家族やその他関係者を含めています。

また、具体的な施策には、(1)保健、医療、介護などのサービス提供に関する専門知識を持つ人材の確保と養成(2)65歳未満の若年性認知症の人の雇用継続(3)相談体制の整備(4)移動や施設利用での利便性と安全性の向上(5)状況に応じた意思決定の支援と成年後見制度の利用促進(6)予防、診断、治療に関する研究開発の推進――などを挙げました。

今後、公明党は基本法案の早期の取りまとめに向け、党内議論に加え、認知症の当事者や有識者らの意見も聴いていく考えです。


施策の厚みもたらす役割に期待

認知症介護研究・研修東京センター 山口晴保センター長


日本の認知症施策の一つ、1000万人を超えたサポーターは米国や英国など先進諸国の手本となっています。

現在、日本国内には認知症の人が約500万人いると見られています。数の上では、地域にいる一人の認知症の人に対して、二人のサポーターがいることになります。

これは、政府が掲げた目標達成に向け、自治体をはじめ、地域が一丸となって取り組んでいる成果です。

かつては「痴呆」と呼ばれ、誤解や偏見が多かった認知症への、正しい理解が広がっていることを示しています。

認知症と、ひとまとめに言っても、それぞれの症状や置かれている状況、求められる支援は異なります。加えて地域性もあるため、学校区や自治会・町内会ごとに、きめ細かい支援内容を考えることが不可欠です。

そこで、期待されるのがサポーターの存在です。意欲のある人には、さらなる技能向上の道をつくり、見守り・買い物支援や認知症カフェなど地域の支援者として活躍できる場を積極的に増やすことが、認知症施策の厚みをもたらすことになります。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ