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- 2018.05.28
- 情勢/解説
2018年5月28日
18日に成立した「改正バリアフリー法」と、2020年東京五輪・パラリンピックに向けて多彩な文化芸術の行事を行う「文化プログラム」の関連予算拡充に関する政府への公明党の要望(22日)内容を解説する。
改正バリアフリー法
公共交通事業者に計画策定と進捗の公表を義務付け。
自治体は整備の方針や対象地区を「マスタープラン」で明示へ。
Q バリアフリー化を加速させるための法律が改正されたと聞いた。
A 12年ぶりに改正された「バリアフリー法」のことだね。20年の東京五輪・パラリンピック開催へ向け、高齢者や障がい者が社会参加できる共生社会の実現を基本理念に掲げ、鉄道やバスなど公共交通のバリアフリー化を進める内容だ。
政府は、1日の利用客が3000人以上の空港や駅などの旅客施設について、20年度までに全ての段差を解消する目標を掲げている。しかし、スペース確保の難しさや費用負担を伴うので、16年度末時点の段差解消率は約87%にとどまっている。
改正法は、エレベーター設置などの段差解消策や職員を対象に行う介助研修の強化を盛り込んだ計画の策定と、進捗状況の公表を公共交通事業者に義務付けた。策定しない場合、50万円以下の罰金が科せられるほか、事業者の取り組みが不十分であれば政府は是正勧告できる。
Q 自治体の取り組みは進みそうか。
A 市町村を対象に、バリアフリー方針の作成や重点的に整備する地区を定める「マスタープラン(基本計画)」の策定が努力義務として規定された。
バリアフリーのまちづくりを進める上で、旅客施設や障がい者施設、両者をつなぐ歩道の一体的な整備は欠かせない。現在のバリアフリー法は、事業内容を盛り込んだ基本構想を市町村が作成できると定めているが、作成している自治体は約2割(16年度末時点)にとどまる。「マスタープラン」を作成して自治体の方針が明確になれば、事業者や障がい者ら関係者との議論が円滑になり、基本構想の策定につながると期待される。
Q 誰もが利用しやすい環境の実現に向けた具体策は。
A 注目したいのは、既存地下鉄駅にあるトイレのバリアフリー化の促進だ。多機能トイレを設置するスペースがない場合、駅と近接する建築物と協定を結び、建築物の内部にトイレを設置して駅と一体で使いやすくする制度が創設された。新たに導入する貸切バスや遊覧船をバリアフリー基準の適合対象にするほか、施設管理者を対象に、バリアフリー情報の提供も努力義務として定められた。
五輪文化プログラム
公明党は成功をめざし体験型イベントの普及や文化財の保存、障がい者の芸術活動の支援へ予算の拡充を政府に要望。
Q 公明党が、文化芸術政策の予算を手厚くするよう政府に訴えたそうだね。
A 党文化プログラム推進委員会(委員長=浮島智子衆院議員)が、20年東京五輪・パラリンピックに向けて各地で行われている「文化プログラム」をはじめとする文化関連予算の拡充を要請した。子どもに対する文化芸術体験機会の充実や文化財の保存・活用の支援強化などが要請の柱になっている。
Q 「文化プログラム」とは?
A 五輪開催に向け各種団体が行う多彩な文化芸術イベントだ。五輪と文化活動は深いつながりがあり、五輪憲章には「スポーツを文化と教育と融合させる」と明記され、開催国に実施を義務付けている。最近では、12年のロンドン大会が、大きな成果を上げたと評価されている。
ロンドン大会では英国全土1000カ所以上で行われ、204カ国・地域から4万人超のアーティストが参加した。08年の北京五輪終了時からロンドン五輪終了時までの4年間で行われたイベント総数は約18万件に上り、参加人数は約4340万人を記録、観光産業への貢献など高い経済効果をもたらした。
東京大会に向けては、文化庁が基本構想を発表し、20万件のイベント開催、5万人のアーティスト、5000万人の参加を目標に掲げ、伝統芸能の公演などが各地で行われている。
Q 今回、公明党は具体的にどのような要望をしたのか?
A 日本文化の魅力を国内外に発信する必要性を強調し、美術館や博物館が中核となった体験型プログラムを普及させ、来年9月に京都で開催される国際博物館会議(ICOM)の大会でも発信するよう提案した。
また、文化プログラムには文化財の活用が欠かせない。後世に保存・継承していくため、文化財の修理や整備、美装化への支援強化を求め、地域の取り組みを後押しする「文化財保護法改正案」の早期成立を訴えた。
このほか、障がい者の文化芸術活動の基盤整備、日本文化を学芸員らが紹介する「日本文化コンシェルジュ」の創設、映画やアニメを活用したメディア芸術の振興へ作品の撮影環境改善なども申し入れた。
文化プログラムの成功に向け、公明党は16年、党内に推進委員会を設置。文化芸術関連団体などから意見を聞き、同年12月に政府へ提言を行うなど、文化プログラムの効果的な計画・実施に向けて要望を重ねている。