e米朝首脳会談 開催へ北は「完全非核化」決断を
- 2018.05.28
- 情勢/解説
2018年5月28日
熾烈な駆け引きが続くであろうことは、当初から織り込み済みだ。驚くには当たらない。むしろ今こそ、北朝鮮の「非核化」の意志が本物かどうか、この一点を見定め、冷静に交渉の行方を注視する態度が求められよう。
史上初の米朝首脳会談を巡る動きが活発化している。
24日にはトランプ米大統領が、北朝鮮が対米批判を強めていることなどを理由に、会談の中止を突然発表した。
これには北朝鮮も相当衝撃を受けたようだ。それまでの敵対的な態度を一変させ、「我々は問題を解決していく用意がある」と対話継続の意欲を異例の早さで表明した。
すると今度は、トランプ大統領が前日の会談中止発表から一転、「(北朝鮮は)非常によい談話を出した」として、予定通り6月12日に首脳会談を開く可能性に言及した。
さらに26日には、韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が、軍事境界線のある板門店で2度目の首脳会談を予告なしに開催。文大統領によると、金委員長は朝鮮半島の非核化への意志を改めて明確にしたという。
これら一連の動きから透けて見えるのは、最大の焦点である非核化プロセスを巡る米朝間の溝の深さだ。事前交渉の難航ぶりが目に浮かぶ。
米国は「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」を短期間で実現するよう求め、制裁緩和や経済支援などの見返りはこれを受けて与える方式を想定している。
一方、北朝鮮は「段階的な措置」を訴え、非核化のプログラムが進むたびに見返りを受ける方式を主張する。
確実に言えることは、この溝が埋まらないまま首脳会談を開催したとしても、大した成果は期待できないということだ。金委員長は「ボールは北朝鮮側にある」(ニューヨークタイムズ)ことを自覚し、「完全な非核化」を速やかに決断すべきである。
そのためにも国際社会は、国連安保理決議に基づく制裁体制を緩めてはならない。
日本政府も「北朝鮮の政策を変えさせるために日米韓で連携していく」(菅官房長官)ことは当然として、北朝鮮の後ろ盾として影響力を強める中国への働き掛けにも力を注ぐ必要がある。