e成立待たれる働き方改革 関連法案
- 2018.06.11
- 政治/国会
2018年6月10日
政府が今国会の最重要法案と位置付ける働き方改革関連法案が衆院を通過し、参院で審議されており、早期成立が期待されます。法案には、自民、公明の与党両党に加え、野党の日本維新の会、希望の党なども賛成しています。働き方改革が求められる背景と同法案のポイント、公明党の主張が反映された内容を解説します。
制度改革の意義
働き方改革関連法案は、性別や年齢、病気・障がいの有無、子育てや介護など個々の状況に応じて、一人一人が活躍でき、より良い将来展望を持てる社会の構築をめざすものです。
そのために働く人の心身にわたる健康を守り、多様で柔軟な働き方を可能にするとともに、雇用形態にかかわらない公正な待遇を確保する内容が盛り込まれています。
これらは、人口減少・少子高齢化が進むわが国において、社会・経済両面で活力を維持し高めていくためにも、とても重要です。
長時間労働の是正
「時間外」に罰則付き上限
時間外労働について、労使(労働者と使用者)が合意すれば実質的に上限がない現状を改め、罰則付きの上限規制を創設します。公明党の主張を反映したもので、1947年の労働基準法制定以来、初となる大改革です。施行は大企業で2019年4月、中小企業で20年4月からです。
具体的には、時間外労働の上限を原則、月45時間、年360時間に設定。繁忙期など臨時的な特別な事情がある場合でも、年720時間、1カ月100時間未満(休日労働含む)、2~6カ月の平均で80時間(同)とします。その上で、原則である月45時間を超えられるのは、年6カ月までとなります。
この上限は、経済界と労働界の代表が合意したもので、連合の神津里季生会長は5月22日の衆院厚生労働委員会の参考人質疑で「一刻も早くスタートさせてほしい」と強調しています。
勤務間インターバル
健康維持へ企業に導入促す
勤務終了から次の始業までに一定の時間を空けて従業員を休息させて健康増進を図る勤務間インターバル制度。
「過労死防止に最も効果的な対応策の一つ」とされています。
しかし、2017年の厚生労働省の調査によると、導入企業はわずか1.4%で「制度を知らなかった」という企業は4割を超えています。そこで、働き方改革関連法案では、同制度の導入を企業の努力義務としました。
公明党は、政府への提言などで制度の普及を一貫して主張。厚労省の有識者会議も、20年までに導入企業の割合を10%以上に高めるという数値目標を初めて設定し、一層の普及をめざそうと取り組みを加速化する方針です。
同一労働同一賃金
不合理な待遇差を解消
正社員と非正規労働者の待遇に、不合理な差をつけることを禁じる「同一労働同一賃金」の実現も、同法案の柱の一つです。
日本ではパートや派遣社員、契約社員などの非正規労働者が雇用者全体の約4割を占める一方で、時間当たりの賃金は正社員の約6割程度。正社員と同じ職務内容でも賞与や福利厚生、教育訓練などの待遇に差がある事例がありました。
このため、法案では、正社員と職務内容や転勤の有無などの条件が同じ場合、待遇を均等にするよう明記。職務内容や責任の度合いなどに違いがあれば、企業が一つ一つの待遇について適切に判断するよう定めました。いずれも公明党の提言に沿った内容です。
さらに国会審議を通じて公明党は、将来設計に多大な影響を及ぼす退職金についても、待遇差禁止の対象になり得ることを確認しています。
高プロ制度の創設
厳格な要件の下、時間規制から除外
職務の範囲が明確で高収入の専門職に限定し、労働時間規制の適用を除外する高度プロフェッショナル制度(高プロ)を創設します。勤務時間でなく成果で評価される働き方を希望する人のニーズに応えるもので、研究開発など高度な専門的知識が必要な労働者への適用が想定されます。施行は2019年です。
高プロの適用には厳格な要件を満たす必要があります。
年収は「平均給与額の3倍を相当程度上回る水準」と法律に明記され、具体的には1075万円以上となります。企業側と労働者側の同数からなる労使委員会での5分の4以上の賛成と、労働者本人の同意も要件となります。
これらの要件は「法改正することなく変更することは不可能」(安倍晋三首相)です。高プロ適用後に本人の意思で解除できる規定も設けられています。
健康確保へ、年104日以上かつ、4週間を通じて4日以上の休日確保も企業に義務付けます。