e福島 主要魚種漁復活/本格操業と風評払拭への弾みに
- 2018.06.12
- 情勢/解説
2018年6月12日
福島の漁業再興に向けた重要な一歩である。風評払拭への弾みともしたい。
東京電力福島第1原発事故の影響で中断していた福島県沖のスズキ漁など主力3魚種の漁が再開した。
原発事故翌年の2012年から魚種や海域を限定して実施してきた試験操業の一環で、これで出荷制限されていた主要魚種全ての漁が復活したことになる。早期の本格操業に向けた取り組みが一層加速することを期待したい。
今回、新たに試験操業に加わったのはスズキのほか、シロメバルとキツネメバル。いずれも暖流の日本海流と、寒流の千島海流がぶつかる好漁場の福島県沖を代表する魚種で、震災前は「常磐もの」として人気が高く、漁業関係者の大きな収入源だった。
県漁連によれば、3魚種とも過去3年以上、国が定める放射性物質の基準値(1キロ当たり放射性セシウム100ベクレル以下)を超えていない。
しかも出荷されるのは、「石橋をたたいても渡らない」(野崎哲・県漁連会長)との考えの下、県独自に設けている、より厳格な基準(同50ベクレル以下)を満たしたものだけ。安全性に問題はない。
試験操業による全魚種の水揚げ量は、昨年実績で3281トン。震災前水準には遠く及ばないが、それでもスタート時の12年121トンに比べれば目覚ましい成長ぶりだ。3魚種復活で、今年はさらに飛躍することは間違いあるまい。
ただ、かつての福島漁業の活気を取り戻すには、なお多くの課題を乗り越えなければならないのも事実だ。
最大のネックは、やはり原発事故による風評である。流通量が大幅に減ってしまったのに加え、価格も大きく落ち込んだままだ。
その意味で、今回の主要全魚種復活に合わせ、流通大手のイオンが首都圏の5店舗に福島県産水産物の常設売り場を開設したのは注目される。
同様の取り組みが他の大都市圏の量販店でも出てくれば、おのずと「常磐もの」のPRが進み、風評払拭と販路・価格双方の回復につながると期待できるからだ。
地元漁業者や流通業者らはもちろん、国や各都道府県も全力で支援し、この好循環の構図をぜひ創出してほしい。