e山と生きる 岩手・宮城内陸地震10年(下)

  • 2018.06.15
  • 生活/生活情報
2018年6月15日


テックフォース(緊急災害対策派遣隊)
迅速に初動対応を展開
経験生かし各地で活躍


大規模災害の発生時から機動的に復旧支援を行う国土交通省の緊急災害対策派遣隊(テックフォース)。2008年4月に創設した直後の6月14日に発生した岩手・宮城内陸地震が初出動となった。
テックフォース創設の効果は、震災発生当日に現れた。従来の派遣隊は、災害発生の"その都度"体制を整えていたため、時間のロスが生じていた。一方、テックフォースは事前に国交省の各地方整備局に「隊員」を指名しており、発生直後に437人が全国から被災現場へ向かうことを可能にした。
現地入りしたテックフォースは、ヘリコプターからリアルタイムの映像で被害状況を災害対策本部に送り、被害の全体像の把握に貢献。また、寸断された道路の啓開(車が通れるだけのルートを切り開く)活動や、災害対応に追われる首長を「リエゾン」(情報連絡員)が補佐するなど、発生直後から復旧段階まで延べ1499人の隊員が支援に走った。
この初出動は、後の災害対応に大きな影響を与える。テックフォースを管轄する国交省水管理・国土保全局は、「(内陸地震対応で)隊員の確保や人材育成など事前の準備の必要性が認識された」と指摘。(1)隊員数の増加(2)調査・活動マニュアルの整備(3)研修・訓練の強化――に着手した結果、東日本大震災では、4県31市町村に1万8115人を派遣。救命救助ルートを確保するための「くしの歯作戦」(道路啓開)をはじめ、震災復旧を進める上で不可欠な役割を果たした。
一方、同局防災課災害対策室の波多野真樹・防災企画官は、「大規模災害に備え、必要な体制の確保や発災時の初動対応能力のさらなる向上に取り組む」と語っていた。
土砂災害や集落の孤立......。国土の大半を中山間地域が占めるわが国にあって、どう命を守るか。岩手・宮城の経験と教訓は、今後の防災・減災へ生きるはずだ。

迫り来るリスクへ備え、機能強化に全力尽くす
太田昭宏 公明党全国議員団会議議長

岩手・宮城内陸地震が発生した翌15日、私は土砂が崩落し道路が寸断された現場にいた。行方不明者の救出と二次災害の防止に追われる中、テックフォースが比類なき役割を果たしたことをよく承知している。
当時は創設したばかりで、"国土交通省の派遣隊"としか認知されていなかった。だが、その仕事ぶりは確かなものだった。
故・冬柴鉄三国土交通相(当時、公明党)時代に始まったテックフォースは、被害の全体像把握やリエゾンによる首長の補佐、二次災害防止策など、復旧対応で大きな成果を残した。
あれから10年。大規模災害のたびに被災現場へ出動し、熟練度を上げてきた。東日本大震災の「くしの歯作戦」をはじめ、熊本地震や九州北部豪雨災害などでの活躍を見れば、今やテックフォースが「災害の初動対応に欠かせぬ存在」であることは一目瞭然だ。
相次ぐ局地的豪雨災害や首都直下地震、そして南海トラフ巨大地震など、迫るリスクへいかに備えていくべきか。テックフォースへの期待は高まっている。公明党は、その機能強化を全力で支援していく決意だ。
(おわり)【この連載は東北支局が担当しました】

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ