e米ロ首脳会談  本格的な対話再開の第一歩に

  • 2018.07.19
  • 情勢/解説
2018年7月19日


米国のトランプ大統領とロシアのプーチン大統領は16日、フィンランドの首都ヘルシンキで会談し、「冷戦後、最悪」とされる米ロ関係の改善をめざすことで一致した。
米ロは本来、国際社会が直面する課題の解決に向けて、互いに協力すべき関係にある。しかし、2014年にロシアが武力を背景にウクライナ南部のクリミア半島を編入して以降、米ロ関係は急激に悪化。両国の外交交渉のほとんどが保留されたままだ。
今回の首脳会談を、米ロは本格的な対話再開の第一歩にする必要がある。
特に、21年に期限を迎える新戦略兵器削減条約(新START)の延長交渉の開始に、両首脳が意欲を見せたことは評価できる。
新STARTは10年に米ロが調印し、翌11年に発効。18年2月までに、(1)射程500キロメートル以上で威力の大きい戦略核兵器の配備数を1550発以下とする(2)大陸間弾道ミサイル(ICBM)や戦略爆撃機などの核兵器の運搬手段の総数を800以下とする―などを両国に求めている。
米ロは既に、新STARTが義務付ける削減目標を達成している。
しかし、プーチン大統領は今年の内政・外交の基本方針を示す年次教書演説で、核戦争も辞さない構えを見せ、トランプ大統領もそれに対抗し、新型核兵器開発を進める方針を盛り込んだ新たな核兵器政策を発表した。新STARTの延長交渉が行われなければ、米ロの核軍拡競争が一層過熱する恐れさえあった。
また、新STARTは、核兵器の削減を米ロが本当に行っているかどうか確認するため、現地査察なども行う具体的な検証措置も備えた貴重な核軍縮条約でもある。これを継続していくことが重要だ。
新STARTの延長に向けて、米ロは今後、具体的な協議の道筋を示すべきだ。
一方で、ロシアによるクリミア半島の編入や、16年の米大統領選への介入疑惑といった問題は棚上げされる格好となった。これらは国際秩序の根幹に関わる問題である。トランプ大統領には、ロシアとの関係改善とともに、ロシアを批判すべき点についてはきちんと批判する難しい舵取りが求められている。

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