e犯罪被害者ら支える条例制定へ

  • 2018.07.25
  • 政治/大阪
2018年7月25日


大阪府議会 請願書を全会一致で採択 
知事、提出の意向示す


先月8日の大阪府議会本会議の最終日に、犯罪被害者等支援条例の制定を求める請願が全会一致で採択された。これを受け、松井一郎知事は来年2月議会までに条例案を議会に提出する意向を示し、関係者から喜ばれている。背景には、一人の小さな声をカタチにする公明議員の取り組みがあった。
犯罪被害者等支援条例は、心身ともに大きな傷を負う被害者とその家族や遺族の権利を保護し、二次被害を防ぐために自治体の責務や支援態勢を明確にしたもの。具体的には、新たな居住地や就労先の確保、訴訟費用の一部補助といった経済的支援をはじめ、教育支援を行う自治体もある。
警察庁によると、全国で同様の条例を制定しているのは31道府県、市区町村単位では446自治体(4月1日現在)。ここ数年、制定もしくは改正を行う動きが広がっており、京都府や滋賀県などでは全自治体が制定している。
一方、大阪府内では全43市町村のうち、堺市や摂津市など5市にとどまる(同)。条例のない大阪府ではこれまで、2006年に策定した犯罪被害者等支援に関する指針に基づき、府内全市町村での相談窓口の設置や府営住宅への優先入居などの関連施策を進めてきたことから、条例制定には慎重な姿勢だった。

公明議員が後押し 遺族らの声 原動力に

「一日も早く自治体の法律である条例を作ってほしかった」。大阪市平野区在住の木村清次さん(70)は14年前、強盗目的の男によって娘の芳美さん(当時23)の命を奪われた。以来「時間が止まり、面影がずっと尾を引き続ける」と吐露する木村さん。「一人の人間が殺されたら、残された周りの人間もまた、被害者。この現実を、もっとよく知ってもらいたい」
11年夏、木村さんから相談を受けた公明党の藤村昌隆府議は、議会のたびに支援の法的根拠となる条例の制定を府当局に要請。昨年8月には、木村さんが所属する「全国犯罪被害者の会(あすの会)」(先月3日に解散)の林良平・代表幹事代行(当時)とも意見交換。林さんら同会のメンバーもこれまで、他党の議員に協力を呼び掛けていたが、策定済みの指針がネックとなり、思うように前に進まない状態だった。
事態打開へ、藤村府議は4月、今年から条例を施行した福岡、大分の両県の担当者にヒアリング。「当事者団体からの請願が条例制定の大きな原動力になった」との助言を受け、すぐさま林さんに連絡を取り、5月定例議会に請願書を提出してもらうよう説明。府議会公明党の八重樫善幸幹事長、山下浩昭政調会長と共に各会派に協力を呼び掛け、公明、維新、自民の主要3会派が紹介議員となり、全会一致の請願採択に至った。この議会の意思を重く受け止めた松井知事は、従来の方針を180度転換。ついに、条例策定への足掛かりができた。
府議会公明党のメンバーはこのほど、林さんや木村さんをはじめ被害者家族・遺族と懇談。「あすの会の解散が決まり、条例ができていないことが心残りだった」と林さんは振り返った。さらに「公明党の皆さんが用意周到に議会で根回しをしてくれ、理解が進んだ」とも語り、「私たちが恩恵にあずかれるわけではないが、これから先、同じように苦しむ人たちの少しでも救いになれば」と言葉を紡いだ。
藤村府議は「当事者の皆さんの声を反映した実のある条例にしていけるよう、引き続き全力で取り組んでいく」と話していた。

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