eコラム「北斗七星」

  • 2018.07.26
  • 情勢/社会
2018年7月26日


南の夜空に今、赤い星が明るく輝いている。31日に最接近する火星である。365日で太陽を一周する地球は、687日の公転周期で楕円軌道を描く火星の内側を回っている。約780日ごとに火星に追いつき、追い越す最接近を繰り返すが、今回は15年ぶりの"大接近"だという◆天体の動きはかくも精密に計算できるのに、人知を超えた地球の異常な天の動きは何とうらめしいことか。「天災ばかりは科学の力でもその襲来を中止させるわけにはいかない」。西日本豪雨の甚大な被害は、約80年前に寺田寅彦が書いた「天災と国防」の一文をまざまざと痛感させた◆愛媛大学災害調査団によると愛媛県宇和島市吉田町では、7・7平方キロの範囲だけで700カ所以上の斜面崩壊が発生。大雨で岩盤内の水圧が高まり崩落につながった現象は、南海トラフ地震の発生時にも起こりうると指摘している◆同県のまとめでは、農林水産業の被害額も平成最多の430億円以上に。みかん畑などの壊滅的な被害に加え、40年近く連続日本一を誇る魚の養殖業も大打撃を受けた。道路や鉄道の復旧とともに支援対策が急務だ◆寅彦は、「国家を脅かす敵としてこれほど恐ろしい敵はないはずである」とも。いつ襲来するかわからぬ"見えない敵"に備え、対応する力を高めなければならない。(祐)

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