e【主張】ふるさと納税 寄付者の悩みに応える返礼品も
- 2018.07.30
- 情勢/解説
2018年7月28日
応援したい自治体に寄付を行うことができる「ふるさと納税」制度が始まって今年で10年になる。
総務省が今月発表した、ふるさと納税による2017年度の寄付総額は、前年度比1.28倍の約3653億円と、5年連続で最多を更新した。寄付件数も1730万を超えており、国民に定着してきたといえよう。
ふるさと納税で2000円を超える寄付をすると、年収や寄付額に応じ所得税と住民税について税額控除が受けられる。その上、寄付者に対し自治体から地元産品などが返礼品として贈られる。この返礼品の魅力が、ふるさと納税の拡大を大きく後押ししたとされている。
ただ、返礼品の価格は寄付額の3割が目安とされたにもかかわらず、豪華な返礼品で寄付を集める自治体が続出し、総務省が返礼品の見直しを要請する事態となった。今後の教訓としてほしい。
こうした中、返礼品の内容に変化が見られることに注目したい。
例えば、高齢者の見守り支援である。日本郵便は昨年10月から始めた訪問サービスを、ふるさと納税の返礼品として使えるようにした。郵便局員が月1回、高齢者の自宅を訪ねて暮らしぶりを確認し、離れて暮らす家族に伝えるというものだ。現在、60を超える自治体が返礼品の一つとしている。
空き家になった実家の管理を所有者に代わって行うサービスを返礼品に加える自治体も増えてきた。内容は自治体によってさまざまだが、NPO法人や民間事業者に委託して、敷地内の清掃、建物外部の異常や劣化の確認、ごみ撤去、ポストの郵便物転送まで担うところもある。
いずれも、モノではなくサービスを提供するという点で共通しており、とりわけ寄付者の悩みを解決する視点が目を引く。高齢者や空き家への取り組みは、自治体にとってもメリットがあろう。
西日本豪雨など被災自治体を支援するために、ふるさと納税を利用するケースも増えている。
寄付に込められた善意に応え、地域の発展や課題解決に結び付くよう自治体は工夫を重ねてほしい。