e【主張】RCEP交渉 日本のリードで早期妥結を

  • 2018.07.31
  • 情勢/解説
2018年7月31日


東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の実現に向けた交渉が加速している。今月、東京で開かれたRCEP交渉の閣僚会合で、年内の大筋合意をめざす方針で一致した。自由貿易を一層進展させる重要な動きとして注目したい。
RCEPは、東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟する10カ国に加え、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インドの計16カ国が参加する自由貿易圏構想である。
実現すれば、世界の総人口のほぼ半分(約34億人)と国内総生産(GDP)の約3割(約2200兆円)を占める巨大な経済圏が誕生する。来年の発効が見込まれる、米国を除いた日本など11カ国が参加する環太平洋連携協定(TPP11)の倍以上の規模だ。
RCEP交渉の妥結が急がれている背景に、米国が他国からの輸入品に高関税を課し、貿易摩擦が激化していることがある。
自由貿易は、自国と貿易相手国の双方が得をする「比較優位」の考え方に基づく。
ところが今、米国が、自国産業を守ろうと保護主義的な動きを強めていることに対抗し、中国や欧州連合(EU)なども、米国製の輸入品に高関税を課す報復に打って出ており、「巻き込まれた全ての国が敗者となる」とされる貿易戦争の様相を見せている。
だからこそ、アジアの各国が自由貿易の推進で団結し、米国に通商政策の転換を求めたい。そのためにも、RCEPを早期に実現し、TPP11とともに、自由貿易を守る"とりで"を重層的に築いておくことが重要である。
しかし、RCEP交渉は遅々として進んでいない。
2013年に交渉が始まってから5年間で合意できたのは18ある交渉分野のうち、中小企業の貿易への参加促進と、ミャンマーやラオスなど途上国への経済技術協力のわずか二つ。今月17日から27日まで行われた事務レベルの交渉で、さらに税関手続き・貿易円滑化と政府調達の2分野で合意し、ようやく四つだ。
日本は既に、ASEANと経済連携協定(EPA)を締結し、自由貿易を進めている。この経験を生かし、RCEP交渉の早期妥結を、日本がリードすべきである。

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