e対談 夢と可能性 信じるチカラ
- 2018.08.06
- 情勢/テクノロジー
2018年8月5日
文部科学大臣政務官、参院議員 新妻秀規氏×宇宙飛行士 金井宣茂氏
宇宙での長期滞在を終え、6月に地球に帰還した金井宣茂・宇宙飛行士と新妻秀規・文部科学大臣政務官(公明党)が宇宙の魅力について語り合いました。
宇宙の魅力を広く伝えたい 金井
飛行士の活躍 地上から応援 新妻
新妻文科大臣政務官 金井さんお帰りなさい! 168日間の任務、本当にお疲れさまでした。宇宙生活はどうでしたか?
金井宇宙飛行士 無事戻ってまいりました! 宇宙は本当に楽しい所で、あっという間でした。特殊な環境での生活に不安を抱いて出発しましたが、いざ行ってみると、何でもプカプカ浮いていて、寝る時も体が浮いて、どこにも触れることなく快眠そのもの。宇宙食もおいしくて、おなか回りが少し大きくなりましたよ(笑い)。
ところで、実は私たち"宇宙兄弟"なんですよね。
新妻 そうなんです! 私も宇宙飛行士をめざしていました。初めてお会いしてから10年になりますね。
金井 宇宙飛行士候補者選抜の2次試験の時でしたね。私が会場に向かおうとバス停で待っていたら、新妻さんがいきなり「もしかして受験生ですか?」と声を掛けてきて。私は怪しげに「そうですけど......」と。
新妻 懐かしいですね。偶然にも試験を受けるグループも同じ。金井さんは、どんな課題も着実にこなして安定感は抜群でした。やはり、宇宙への旅は長年の夢だったんですか?
金井 私は、子どもの頃から宇宙をめざしていたわけではないんです。海上自衛隊で医師として働く中で、潜水医学を学びました。その過程で、深海で行う潜水と宇宙飛行が似ていることに気付き、極限状態で健康を守りながら活動する視点から、宇宙での活動に興味を持ち始めたんです。
新妻 私は対照的で、子どもの頃から星や宇宙が大好きで、大学では航空宇宙工学を専攻し、数人の知人が選抜試験に挑戦する姿に触発され、応募しました。結果は不合格でしたが、年月を経て、現在は文科大臣政務官として宇宙政策などを担当しています。道は違えど地上から日本人宇宙飛行士を応援する立場となり、すごい巡り合わせだと感じています。宇宙ではどんな活動を行ったんですか?
金井 「健康長寿のヒントは宇宙にある。」をテーマに、アルツハイマー病の原因となるアミロイド(繊維状のタンパク質)の研究など、医学的に重要な実験を数多く担いました。実験の成果や宇宙の魅力を伝えていきたいです。
国際宇宙ステーション(ISS)の補修で船外活動も行いました。ただ、宇宙服はゴワゴワして非常に動きにくく、6時間も繊細な作業が続くので疲労は相当なものでした。
新妻 ISSとの交信イベントで、私は福島のサブ会場で参加しましたが、質問に分かりやすく答える金井さんに、集った子どもたちは興味津々。本当に満足そうでしたよ。
金井 被災地はいまだ復興の途上にあり、本来は私が励まさないといけないのに、会場の子どもたちの熱気や宇宙から見た会津磐梯山、猪苗代湖の美しさに元気をもらいました。
挑戦こそ新たな道を開く 金井
若い世代の未来は無限大 新妻
新妻 宇宙探査は今後、人を月に送り、火星をめざす時代が到来することは間違いないでしょう。夢は無限大ですね。金井さん、月や火星に行ってください!
金井 月に降り立ったのは、まだ米国人だけ。日本人にもチャンスが訪れるでしょうし、人類が初めて火星に向かう時のクルーに、きっと日本人がいるはずです。私も機会があれば行きたいですが、宇宙飛行士に限らず、多くの人に宇宙を体験してもらいたいです。
新妻 やはり、未来を担う世代にこそですね。
金井 帰還する際、ツイッターに「さあ次は、あなたの番です。SPACE is waiting for YOU!!(宇宙は、あなたを待っている!!)」と書きました。全ての子どもや若者たちにこの言葉を送りたい。
私は、なりたかった医者の仕事をしているうちに、自衛隊、潜水、宇宙飛行士と興味が増え、そのたびに挑戦し続けた結果、新しい道が開けてきました。自分の興味に対して懸命に挑戦すれば、宇宙に限らずアッと人が驚くような世界に巡り会えると思っています。
新妻 本日はありがとうございました。
かない・のりしげ 1976年生まれ。防衛医科大学校卒業後、海上自衛隊で外科医師・潜水医官として勤務。2009年、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士候補に追加選抜され、11年に宇宙飛行士に認定。15年に国際宇宙ステーション(ISS)長期滞在が決定し、17年12月から168日間宇宙に滞在した。