eコラム「北斗七星」
- 2018.08.08
- 情勢/社会
2018年8月8日
きょう8月8日は「ひょうたんの日」。数字の8が瓢●(たん)の形に似ていることから定められたらしい。今は水分補給にペットボトル飲料は欠かせないが、古くは瓢●(たん)に水を入れ持ち歩いていた◆瓢●(たん)には逸話がある。織田信長の稲葉山城攻略。8月、不可能とされた城の背後の急峻な山を下り、最初に城内に突入した木下藤吉郎(後の豊臣秀吉)が主君・信長から馬印を許された際、選んだのが竿頭に掲げた瓢●(たん)だった。味方に勝機を知らせたものだ。近世には、地震の原因とされた鯰を瓢●(たん)で押さえる絵が描かれた◆片や植物としての瓢●(たん)は案外知られていない。実は1万年の歴史を持つ最古の栽培植物なのだ。滋賀県の粟津湖底遺跡でも、約9600年前の瓢●(たん)を発見。日本に野生種が自生していないことなどから、人手を介して栽培された証拠となった◆水筒や装飾品のほか、インドなどでは楽器に加工。インカ帝国以前のペルーには代用頭骨として手術に使っていた歴史があり、中国では漢方薬に。用途は20分野に上る(湯浅浩史著『ヒョウタン文化誌』岩波新書)◆そういえば、吉田兼好は『徒然草』(河出文庫)で、驕りを打ち払う賢人の例として、瓢●(たん)を捨て、手で水をすくい飲んだ中国の伝説上の人物を挙げていた。瓢●(たん)一つにも奥がある。続く炎暑。身を修めつつ、前進を重ねたい。(田)