e【主張】風疹患者が急増 特に妊婦の周囲は予防接種を
- 2018.08.27
- 情勢/解説
2018年8月25日
ウイルス性の感染症である風疹の患者が、千葉県や東京都など首都圏を中心に急増している。国立感染症研究所は21日、「国内流行が発生し始めている可能性が高い」との緊急情報を発表しており、十分な警戒が必要だ。
感染は北海道や福岡県でも確認され、全国の今年の患者数は15日現在で139人と、既に昨年の93人を大幅に上回った。1万4000人を超す患者が確認された「2013年の大流行の前兆に類似した状況」(日本産婦人科医会)との指摘も見逃せない。
インフルエンザの2~4倍も感染力が強いとされる風疹は、せきやくしゃみなどの飛沫を介してうつる。症状は発熱や発疹、リンパ節の腫れなどだが、自覚がない人も15~30%ほどいて気づかないまま感染が広がるケースもある。
中でも注意したいのが、妊婦や妊娠を希望する女性のいる家庭だ。妊娠初期の女性が感染すると、赤ちゃんが難聴や白内障、心臓病などを伴う「先天性風疹症候群」になる恐れがある。
予防はマスクや手洗いだけでは不十分とされ、ワクチン接種が「最も有効な予防方法」(厚生労働省)だ。
ただ、妊婦自身はワクチン接種が受けられない。妊娠初期に受けた風疹に対する免疫の有無を調べる抗体検査で、抗体が少ないと分かった場合は、家族をはじめ周囲の人が早めに接種するなど予防に努める必要がある。
また、これから妊娠の可能性がある女性は、あらかじめ抗体検査を受け、ワクチン接種の必要があれば確実に済ませておきたい。
妊婦やパートナー向けに抗体検査の費用助成をしている自治体も多い。神奈川県は9月に風疹予防イベントを開き、ワクチン接種歴がなく抗体検査を受けたことがない28歳以上の男女を対象に、無料の抗体検査を実施する。こうした工夫は各地の取り組みの参考になろう。
過去の予防接種政策の変遷により、特に30~50歳代の男性はワクチン接種を受けていなかったり、自然に感染する機会が少なく、抗体の保有率が低い。国や自治体は医療機関などと連携しながら啓発活動を強化し、接種率の向上に努めるべきである。