eコラム「座標軸」

  • 2018.08.27
  • 情勢/社会

2018年8月26日



トルストイの作品に「人にはどれほどの土地がいるか」という民話がある。農民パホームはある日、耳寄りな話を聞く。わずかな代金を払えば、日没までに戻ることを条件に1日歩いた分の土地が自分のものになるという◆日の出とともに出発した彼は少しでも広い土地を得ようと、食事も休みも取らずに遠くまで歩く。太陽が沈み始め、必死に出発点に駆け戻ったが、そこで息絶えた。下男が埋葬するために掘った穴が、彼に必要な土地だったという落ちだ。我を忘れた欲望の果てに...。教訓は現代にも通じる◆日本では1980年代後半から90年代初頭、カネ余りを背景に空前の土地あさりが横行しバブルが発生した。当時は東京23区の土地価格で米国全土が買えるほどの過熱ぶり。だが、そんな事態は長続きせずバブルは弾け、日本経済を揺さぶった◆米国で起きたリーマン・ショックから来月で10年。金融機関の暴走によって演出された住宅バブルの崩壊は世界経済を震撼させた。その本質も、身の丈を超えて投機を繰り返す「マネーゲーム」だ◆米国発の金融危機を警告していた仏経済学者のジャック・アタリ氏は指摘する。「利他主義を選択したとき、世界はより良い方向に進む」と。傾聴すべき視点といえる。

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